- 2016年2月24日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:リビア
- トピック:地域紛争
反体制派による蜂起でムアンマル・アル=カダフィ政権が倒されてから5年、リビアでは、全土で混乱と人権侵害の悪循環が続いている。国際社会には、この悪循環を断つ迅速で継続的な取り組みが求められる。
同国では武装勢力や民兵、さらに自称「イスラム国」による人権侵害や戦争犯罪がはびこり、人権がことごとく踏みにじられる無法地帯と化している。法の支配の回復には、このまん延する人権侵害に法の裁きを加え、同時に実効性のある人道支援が提供されなければならない。国際社会は、支援を強く必要としているリビアの人びとの期待を裏切ってはならない。
2011年、ガタフィ政権の崩壊に際しては、フランス、イタリア、カナダ、英国、米国などの強い意向でNATOが介入し、反体制派を後押しした。しかし崩壊後の内戦での人権侵害には、それらの国は何の対応も取ろうとしなかった。
まん延する人権侵害
人権侵害の酷さは、目に余る。いずれの勢力も、拉致、捕虜の虐待、拷問、即決処刑などあらゆる人権侵害に手を染め、住宅街に無差別攻撃を加えている。中には戦争犯罪に相当するケースもある。
「イスラム国」は、紛争で生じた権力の空白に乗じていくつかの地域を掌握し、そこでイスラム法の勝手な解釈を強要して住民を恐怖に陥れている。リンチ、むち打ち、手足の切断という残虐な行為を公開で行い、女性には厳格なイスラムの服装のきまりを強要してきた。
長期化する平和への道
昨年12月、国連の調停で、紛争に終止符を打ち、国民合意政府(統一政府)を設立することが合意された。国際社会はこの合意を、「イスラム国」の侵攻を阻止し、欧州への人の非正規移動の問題に対処できる一元的な政府を樹立する上で実効性がある方法として、支持した。すべての関係各国が署名したものの、その実施にあたっては、統一政府の樹立と法の支配の実現が条件となっている。
国際社会による調査
リビアの司法制度は、ほぼ壊滅状況で、はびこる人権侵害には何の措置もとられてこなかった。弁護士、裁判官、人権活動家らは常に、脅迫と襲撃の対象となってきた。
国際刑事裁判所は、捜査と裁判の実施に必要な道筋を示している。あとは各国が国際刑事裁判所への支援を拡大し、はびこる戦争犯罪や人道に対する罪の捜査が可能になるようにすべきだ。
深刻化する人道危機
人権侵害が続き、人道状況は、急激に悪化している。
国連の推定では、紛争で250万人が影響を受け、43万人が家を失った。しかし国連が130万人に基本的援助を提供することを呼びかけたのに対して、これまでの拠出額は目標資金のわずか1パーセントにすぎない。
またアムネスティは、国際社会に対して、紛争から逃れようとする人びとに、安全で合法的ルートを提供することを求めている。2014年以降で、リビアから数十万人が国外に逃れた。多くが、拉致や殺害未遂、その脅迫などを受けていた人びとだった。
彼らのために国際社会は、応分の負担を負うべきである。
アムネスティ国際ニュース
2016年2月16日
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