- 2016年2月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:レバノン
- トピック:難民と移民
国際社会からの支援も不足しているうえ、レバノン政府が難民在留許可を更新しないという差別的な政策をとっているため、頼る当てもないシリア難民女性たちは苦しい状況にある。家主や雇い主、果ては警察など優位な立場の者から搾取される懸念が深刻化している。
レバノンは2015年、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によるシリア難民登録を停止し、難民の在留資格更新をしにくくなるよう、新たな規制を導入した。正規の在留資格がなければ恣意的な逮捕・勾留、場合によっては強制送還の恐れがあるため、不当な扱いを受けても警察に訴えでない人が多い。
レバノン在住のシリア難民の多くは、過酷な状況で生きるために必死に闘っている。広がる差別、食や住まいや仕事を得る上での著しい困難に、日々直面しているのだ。このような状況下で女性たちの暮らしは一段と厳しく、とりわけ一家の主となった女性たちには、職場でも街でも嫌がらせや搾取、虐待の危険がますます高まっている。
多くの女性が語るには、レバノンの高い生活費をまかない、食費や家賃を払うのに必死だが、そのためにますます酷い目にあう場合が多いという。男性から不適切な性的な誘いを受けたり、金銭的援助と引き換えに性行為を要求されたりした女性も少なくない。
家賃を払うだけのお金を稼ぐのは大変なことだ。シリア難民の少なくとも58%は、借家やアパートに住み、その他はぼろぼろのビルや無認可居住区に住んでいる。それでも法外な家賃が払えず、さらに劣悪な住まいに移らざるを得なかったと多くの女性たちが語っている。
2015年1月にレバノン政府が定めた規定により、難民が在留許可を更新するには複雑な事務手続きと高額の費用を負担しなければならなくなった。そのため、多くの難民が更新できず在留許可を失ったため、不当な扱いを受けても訴え出ることができなくなった。
そのため、アムネスティが聞き取りした難民女性の多くは、在留許可がないためどんなに不当な扱いを受けても警察にはいかなかったと語っている。
レバノンは人口比で世界最多の難民を抱えているにもかかわらず、国際社会からのレバノンへの支援は不足している状況にある。だからといって、難民を搾取や虐待から守らないでいいということにはならない。
国際社会がレバノンの難民に資金と支援を提供できないことが、難民女性を貧困と苦境に追いやり、危険にさらしてきた直接の要因である。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、近隣の受入諸国に暮らすシリア難民の少なくとも10%(45万人相当)は、きわめて弱い立場におかれ、近隣地域外の国への再定住が早急に必要であるとしている。とりわけ女性と少女は「きわめて脆弱な難民」の基準を満たすものとUNHCRは考えている。
アムネスティは再定住先を増やし、さらに他にも受入国以外で暮らせる安全な方法を提供するよう、国際社会に呼びかけている。
アムネスティ国際ニュース
2016年2月2日
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