- 2015年12月 4日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:カタール
- トピック:
カタールで2022年のサッカーワールドカップ開催が決まってから5年が経過したが、依然として移住労働者の搾取が広く行われている。建設現場の外国人労働者が置かれている悲惨な状況が、世間に知れ渡っているにもかかわらず、政府はまん延する労働搾取に歯止めをかける対策をまったく打ってこなかったに等しい。
さらに、国際サッカー連盟(FIFA)が、カタールの無策に一役買っている。FIFAは、カタールで労働者の権利が侵害されていることを把握してきた。ワールドカップが労働者の犠牲の上で開催にいたることがないよう、FIFAは当局や提携事業者と緊密に連携しながら準備を進めなければならない。
カタールで2022年のサッカーワールドカップ開催が決まってから5年が経過したが、政府はやるべき改革を怠り、依然として移住労働者の搾取が広く行われている。
建設現場の外国人労働者が置かれている悲惨な状況が、世間に知れ渡っているにもかかわらず、まん延する労働搾取に歯止めをかける対策をまったく打ってこなかったに等しい。
政府の改革案は雇用者まかせで、問題の本質的解決にはならない。しかし、その改革策さえ先送りされてきた。
さらに、国際サッカー連盟(FIFA)が、カタールの無策に一役買っている。
FIFAは、カタールで労働者の権利が侵害されていることを把握してきた。ワールドカップが労働者の犠牲の上で開催にいたることがないよう、FIFAは当局や提携事業者と緊密に連携しながら準備を進めなければならない。
5年経っても進まない抜本的改革
アムネスティは、カタールで過去4年間に5回、外国人労働者の実態調査を実施した。その数は、今後2年以内に200万人に達するといわれている。
今年5月に発表した報告書で移住労働者の権利に関し9つの問題を指摘したが、そのうち5つについて、十分な手が打たれてこなかった。主な問題の現状は以下のとおり。
●賃金支払いの遅延
雇用主が労働者に、所定の日までに銀行口座に直接振り込みで支払うことを求める法律が、今年2月に成立したが、施行されたのは11月に入ってからであった。同国では賃金支払いの遅延がまん延し、外国人労働者と故国の家族らは、深刻な状況に置かれている。
●労務管理官の拡充
この年末までに400人増員するという計画は、2016年末まで先送りされた。
●問題の根幹をなす保証人制度「カファラ」の改革
政府は昨年5月に、雇用主が保証人となるこの制度の一部改正を発表したが、労働者は今もなお、転職や出国の許可を雇用主に求めなければならない。
カファラ制度があるために、賃金の遅払い、窮屈でむさくるしいタコ部屋生活、不満を訴える労働者への脅しなどが、日常的に起きている。だからこそ、小手先の制度改革ではなく、全面的な廃止が必要なのだ。
何千人もの外国人労働者が今もなお、健康や生活の維持に必要なサービスを得ることもままならず、在留許可の取得が遅れ、耐えがたい環境で暮らしている。
FIFAは労働者虐待に終止符を打つ鍵
過去5年間、FIFAはワールドカップの開催予定国のカタールに、ほとんど何の働きかけもしてこなかった。
アムネスティはFIFAに対し、カタール当局に外国人労働者の権利を守る抜本的改革を実施するよう圧力をかけ、その実施状況を監視することを求めている。
>FIFAは、カタールでのワールドカップの実現に向け、全力を尽くしてきた。開催時期を夏から冬に変更するという前例のない手さえ打った。しかし、外国人労働者の権利を保障するよう、カタールに明確で具体的な働きかけはしてこなかった。
FIFAの理事会は来年、新体制に移行する可能性がある。しかし、カタールのワールドカップ開催は人権尊重なしではありえないとはっきり示すまでは、現在のFIFAの課題は克服されない。
アムネスティ国際ニュース
2015年12月1日
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