- 2015年11月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:パキスタン
- トピック:死刑廃止
パキスタンは、昨年12月に死刑執行停止を解除して以来、まもなく300人目を執行する予定だ。その結果、世界死刑大国という屈辱的な地位が決定的になる。
アブドゥル・バシットさんの執行が11月25日に予定されている。彼は対まひ(下半身まひ)患者で、さらに死刑囚監房にいる間、結核髄膜炎を発症した。刑務所には、足場の上に立つことのできない死刑囚の絞首刑方法の規定がないため、バシットさんの執行は何度も延期されてきた。
死刑執行はパキスタンの人権状況の重大な汚点である。さらに、公正な裁判基準と死刑判決を下す場合に順守すべき保護措置が幾度となく無視されていることも、問題を深刻化している。
当局がアブドゥル・バシットさんの執行を停止したとしても、パキスタンが1日にほぼ1人の割合で処刑を行っていることに変わりはない。
相次ぐ執行が同国の人権状況に大きな影を投げかけているばかりでなく、その意図には間違いがある。死刑が、国内のテロの脅威を抑止する効果があったことを示す事実はない。実際、刑務官の話では、活動を禁止されている武装組織ラシュカレジャングビは、メンバーの1人が執行されたことを殉教だと祝ってスイーツを配ったという。
アムネスティは、公表された数字に基づき、今日まで299名の処刑を確認している。2015年10月だけで45件の執行があり、停止解除以降、最多を記録した。そもそも同国が2008年から始めた執行停止を解除したきっかけは、昨年12月にペシャワルの学校で大勢の生徒が犠牲になったタリバンによる虐殺事件だった。しかし、これまで執行された死刑囚の大多数は、テロとは無関係の容疑で死刑判決を受けていた。
アムネスティは、いかなる場合もいかなる国でも、犯罪の内容や状況、有罪・無罪、個人の特質、執行手段などにかかわりなく、死刑に反対する。
多くの死刑判決は、国際的な公正な裁判基準を満たしていない裁判の結果、申し渡されている。これらの裁判の特徴には、囚人に正当な弁護人がつかないこと、および拷問による自白など国際法では認められない証拠を採用していることなどがある。
パキスタンは即時に死刑執行を停止し、その人権義務を果たし、死刑をきっぱり廃止する措置を講じるべきである。
アムネスティ国際ニュース
2015年11月24日
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