- 2015年11月19日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:中国
- トピック:
中国の刑法制度は、いまだに拷問や虐待で強要した自白に大幅に依存している。その上、虐待の申し立てを続ける弁護士は頻繁に当局から脅しや嫌がらせを受け、さらには拘束されて自身も拷問の被害に遭うことがある。
中国政府は、人権状況は刑法改革により改善が進んでいるとしているが、アムネスティ・インターナショナルの調査では、自白が拷問で引き出され、その証言で有罪になるという根深い慣行にほとんど変化は見られなかった。拷問の申し立てと捜査を求めようとする弁護士らは、警察、検察、裁判所に絶えず妨害されている。
警察当局に立ち向かえばどんな報復を受けるか、中国各地の弁護士がアムネスティに語っている。えん罪につながる自白の強要防止を目的とした新しい対策はいろいろ出されているが、刑法には、警察官や検事、その他の役人がその抜け穴をくぐることを可能にする根本的な欠陥があると弁護士らは指摘している。中国の法律専門家らの推定では、すべての刑事被告人のうち弁護人がつくのは20パーセントに満たない。
調査では、公判前の勾留中にも、警官やその命令を受けた他の囚人に殴打されるなどの暴力行為が行われていることが分かっている。
中国の主張では、当局は常に弁護士らの職務を奨励、支援しており、報復などはあり得ないとしている。11月17日の週には、ジュネーブで国連拷問禁止委員会が中国の拷問に関する報告を精査することになっている。
秘密の拘束と拷問
今回の調査では、当局が過去2年間で「指定場所での生活監視」と称する新しい形の隔離拘禁措置を頻繁に取っていることも判明している。これは、2013年に中国刑事訴訟法の改定が発効したときに正式に導入された。
この方式の下では、テロや大型贈収賄事件、国の治安に関わる犯罪などの被疑者は、正規の拘禁制度外の扱いとなり、非公表の場所で外部との接触なしに最大6カ月にわたって拘束される。その間、被収容者は拷問や虐待を受ける恐れが極めて高い。
人権活動家や弁護士らへ弾圧が進む中、12人の弁護士や活動家が、国家治安法容疑で「指定場所での生活監視」の下に現在拘束されている。アムネスティは、全員が拷問や虐待を受ける危険が極めて高いと考えており、彼らを釈放して起訴を取り下げるよう中国政府に要請している。
改革への抵抗
2010年以来何回か改革の機運はあったが、中国の法律における拷問の定義はいまだ不十分で国際法に違反している。中国の法律はまだ「供述を得るために暴力を用いること」といった特定の拷問行為を禁じているだけで、国際法で禁じられている精神的拷問は、明確に禁止していない。
今回の調査で聞き取りをした弁護士の大多数は、司法の独立性の欠如と治安当局の突出した権力が、拷問の訴えで法の裁きを求めるのに大きな障害のひとつになっていると指摘している。共産党幹部から成る各地域の政治委員会や法律委員会は、政治的に微妙な裁判事例の成り行きを決定する上で大きな影響力を奮っている。
拷問と違法な証拠
強要された証言の排除に向けた改革策の実施以来、拷問で自白させられたという訴えに中国の法廷がどう対処したかを分析するため、アムネスティは最高人民法院のオンライン・データベースから得た何百件という裁判所文書を調べた。
拷問の申し立てがあった590件の事例のうち、自白の強要があったとして証拠から除外されたのはわずか16件にすぎず、無罪になったのはそのうち1件で、残りは別の証拠で有罪となった。拷問による証拠が除外された事例がこれだけ少ないということは、今なお強要された自白が証拠として法廷に出され、裁判官もその違法な証拠を排除していないという弁護士らの主張を裏付けていると思われる。
国際法および中国の国内法によれば、証拠が適法に得られたものであるという立証責任は検察の側にある。だが実際には法廷は、被告が立証できなければ当たり前のように拷問の申し立てを却下している。
アムネスティ国際ニュース
2015年11月12日
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