- 2015年11月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イエメン
- トピック:地域紛争
クラスター爆弾の攻撃を受けたサーダ市近郊アフマの住宅地。弾頭の型式は、ブラジルのアビブラス社製造のものと類似している。
サウジアラビア主導の連合軍が10月末、イエメン北部の住宅地で、世界的に禁止されているクラスター爆弾を使用したとみられる。この爆撃で、少なくとも4人が負傷し、多数の不発弾頭が周辺農地に拡散した。
アムネスティは現地で聞き取りをした。聞き取りの対象者は、被害者2名、治療にあたった医療関係者、目撃者1名、攻撃直後に現場にいた地元の活動家1名などだ。爆撃地点で撮影された不発弾は、過去にサウジアラビアが使用したことが判明しているブラジル製のクラスター爆弾に類似していた。
クラスター爆弾はそもそも無差別に殺傷することを目的とする武器であるため、その使用は慣習国際人道法で禁止されている。使用時に一般市民を殺傷するだけでなく、不発に終わった多くの子爆弾が、その後長期間、人が触れると爆発するリスクが残る。サウジアラビア主導の連合軍は、即座にその使用を中止し、すべての関係者はクラスター爆弾の不使用を宣言し、「クラスター弾に関する条約」に加入すべきだ。
目撃者の証言
クラスター爆弾の攻撃を受けたのは10月27日正午頃、サーダ市近郊アフマの住宅地だった。アフマはサウジアラビア国境から南へ約40㎞の所にある。アムネスティの調べでは、爆撃地に最寄りの軍事目標は、武器の売買で知られるアル・タルヒの市場で、3月にサウジアラビアが主導する爆撃が開始されて以降、少なくとも5回、空爆を受けた。目撃者によると、ロケット弾が何発も金属音をあげて空を横切り、空中で爆発し、その後地上のあちこちで爆発があった。これらの証言と地上で見つかった残骸から、多連装ロケットシステムの地対地ロケット砲から発射されたクラスター爆弾の使用が強く疑われる。
使用禁止のクラスター爆弾
クラスター爆弾の使用、製造、販売、移転は、2008年に締結された「クラスター弾に関する条約」で禁止された。これまでの締約国はおよそ100カ国にのぼる。ブラジル、イエメン、サウジアラビアなど、イエメンの紛争に関与するサウジアラビア主導の連合軍の国は、いずれもこの条約の締約国ではないにせよ、慣習国際人道法の規則に従い、この無差別な武器を使用してはならない。
ブラジル製多連装ロケットシステム ASTROS II
今回のクラスター爆弾がブラジル製だとすると、イエメン紛争では初の使用となる。
ブラジルでは、数社がクラスター爆弾を製造している。アフマに落下した弾頭の型式は、ブラジルのアビブラス社製造のものと類似している。
地雷・クラスター爆弾モニターによると、アビブラス社はこの型のクラスター爆弾を過去にサウジアラビアに販売しており、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調べではサウジアラビア軍が1991年、カフジで使用したことがわかっている。このような武器の製造と移転を依然として容認しているブラジルなどの国は、イエメンなどで市民の命が奪われていることに対し無関係を決め込むことはできない。ブラジルは製造を即刻中止し、在庫を破棄し、クラスター弾に関する条約に今すぐ加入すべきである。
アムネスティ国際ニュース
2015年10月30日
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