- 2015年8月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イエメン
- トピック:地域紛争
イエメンのタイズとアデンで、サウジアラビア主導の湾岸諸国軍による空爆とフーシ派と反フーシ派双方の武装勢力による攻撃で、子どもたちを含む多数の民間人が殺害された。これは戦争犯罪に等しい。
アムネスティの調査により、湾岸諸国軍による空爆とフーシ派と反フーシ派間の戦闘が、大勢の人が住む住宅地域で無差別かつ大規模に行われ、多数の住民が犠牲になっている実態が明らかになった。あらゆる戦闘で、冷酷にも民間人の安全がまったく配慮されなかった。
湾岸諸国軍の空爆
アムネスティの調査で、6月から7月にかけて湾岸諸国軍の8回の空爆があり、少なくとも141人が死亡し101人が負傷したことが分かった。その大多数は女性と子どもだった。
7月24日に攻撃を受けたモカの住宅地域の状況について、住民は「死体や頭部が至る所に散乱し、炎や灰に包まれていて、最後の審判の日のようだった」と語った。ある家族は、7月9日の空爆では、子ども4人を含む10人が犠牲になった。彼らは戦闘で自宅を追われ、北アデンの学校に避難していた。
武装勢力間の戦闘
アリ・アブドゥラ・サレハ前大統領派の治安部隊が支援するフーシ派武装勢力と、反フーシ派武装勢力による地上戦は、アデンとタイズで30回に及んだ。これらの戦闘で少なくとも68人が死亡し99人が負傷した。
双方の戦闘員は大勢が住む住宅地域への攻撃にあたり、常にグラド式ロケット砲や迫撃砲、大砲などの照準が不正確な兵器を使用していた。
7月1日のアデン・アル・マンソウラ地区へのロケット攻撃で、避難民が暮らすホテル2つが直撃を受けた。最悪の被害者は18カ月になる赤ん坊で、母親のアマルアリさんは「砲弾の破片がこの子の頭に刺ささり、左の眼を突き抜けた。左の眼は失明し、今は昏睡状態だ」と語った。
7月19日のフーシ派武装勢力によるアデンのダル・サード地区の攻撃は、さらに凄惨だった。殺害された45人の大多数は民間人だった。攻撃の多くは過密な住宅街だったと見られ、これは国際人道法違反だ。
数件の調査では、攻撃で路上や自宅近くで遊んでいた子どもたちが負傷したり命を落としたりした。目撃者らは、「体がすぱっと切断されていたり、ばらばらになっていた」と証言した。「子どもが砲弾の破片を受けて首と頭に穴が開き、血を流しながら駆け寄ってきた。脳の一部が壁や窓に飛び散っていた」と語った目撃者もいた。
紛争の当事者が攻撃時、民間人へまったく配慮しないことがこのような惨状を生んでいる。これが戦争の恐怖と実態であり、一般市民に致命的かつ長期的な影響を与える。
国連調査委員会
アムネスティは国連人権理事会に対して、独立の立場で公平にこの戦争犯罪を調査する国際調査委員会の設置を呼びかけている。国連人権高等弁務官事務所によれば、8月4日までにイエメンでは、この戦闘で少なくとも民間人1,916人が死亡した。また、施設やインフラ設備など207カ所以上が全壊または一部損壊した。
民間人に対する攻撃の加害者は、代償を払わなければならないことを、また戦争犯罪の責任を取らなければならないことを知るべきである。イエメン南部では人道危機が切迫し、市民の悲劇は拡大している。人口の8割以上が人道的支援を必要としている。飲料水や電気などが途絶え、食料品が高騰している。
アムネスティ国際ニュース
2015年8月18日
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