- 2015年5月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:エジプト
- トピック:死刑廃止
5月16日、エジプトの裁判所は、失脚したモルシ元大統領ほか100人を超える被告に対して、死刑判決が妥当との判断を示した。きわめて不公正な裁判手続きを経た上でのこの判断で、同国の司法制度が目に余るずさんな状況にあることが、あらためて浮き彫りになった。
今回の死刑判断は、人権の完全な無視である。裁判は審理の前からすでに司法本来の機能を失っていた。司法審査なしで数カ月間隔離拘禁され、取調べでは弁護士を付けることもできないなど、不当で無効な手続きに基づいた茶番劇であった。
当局は、同氏らが強制失踪させられていた期間に入手した証拠をすべて廃棄し、直ちに釈放するか、公正な裁判をあらためて受けられるようにするべきである。刑事裁判の手続きは、国内法と国際基準に沿ったものでなければならない。
2013年7月以後、死刑判決を受けた人のほとんどはモルシ元大統領の支持者たちである。まるで、元大統領を支持すれば死刑か実刑判決を受けることが決まっているかのようだ。そうではなく、司法制度の独立と公平性を保障し、重大な人権侵害を犯した加害者を裁判で裁くのが、エジプトのやるべきであることである。
裁判所はモルシ元大統領ほか105人に対し、死刑判決が妥当との判断を下した。この中にはムスリム同胞団幹部も含まれる。ハマスとヒズボラの支援を受けた「1月25日革命」の混乱期に集団脱獄を指揮したという容疑だった。
正式な判決は、最高イスラム法官(大ムフティ)の助言を求めたうえで下される。同国の法律で死刑判決に関しては、この手続きが必要と定められている。もし6月2日の最終判断で死刑になれば、最高裁判所にあたる破棄院に上訴することができる。
背景情報
2013年7月3日に軍が支持する政権により大統領を追放された後、モルシ元大統領は、数カ月間、側近とともに強制失踪ともいえる状況で隔離監禁された。
2012年12月に大統領宮殿周辺で発生した衝突に関与した容疑で、今年4月、不公正な裁判で20年の実刑を下され、これまで服役していた。
また、カタールに秘密情報を漏らした容疑で別の裁判にもかけられる。さらに、裁判官を侮辱した容疑でも、裁判が待っている。最初の審理は5月23日に予定されている。
アムネスティは、犯罪の性質や状況、有罪・無罪、個人の特質、死刑執行手段などにかかわりなく、すべての死刑に例外なく反対する。死刑は、世界人権宣言が謳う生きる権利の侵害だ。死刑は、究極の残虐、非人道的かつ品位をおとしめる刑罰だ。
アムネスティ国際ニュース
2015年5月16日
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