- 2015年5月15日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:大韓民国
- トピック:
宗教的な理由で兵役を拒否し、捕まった韓国の若者 @Amnesty International / Photo: Kim Yonggi
良心に従って兵役につくことを拒否した若者ら数百人が投獄されているのは不当であり、韓国政府当局は、こうした投獄をやめるべきである。アムネスティ・インターナショナルは5月13日、良心にもとづく兵役拒否者に関する報告書を公開した。この報告書の中で、武器を取ることをよしとせず、兵役を拒否して投獄された韓国の若者たちが受けている厳しい現実を詳述した。
北朝鮮との間で張りつめた緊張が続く中で、同国の男性は兵役を義務づけされており、ほとんどの場合20歳代初めに徴兵される。兵役期間は21~24カ月で、この期間を満了すれば、予備役として軍務に、8年間、年最大160時間就くことを求められている。
「良心的兵役拒否者に対する代替服務制度を導入すれば、国の安全保障が脅かされ、社会的結束が揺らぎかねない」と政府は主張しているが、国連機関はこの考え方をたびたび否定してきた。
投獄と罰金
韓国は諸外国と比べて、兵役拒否を理由に投獄する件数が多い。現在少なくとも600人が収監されていて、そのほとんどが20~24歳だ。拒否する理由のほとんどは、宗教もしくは平和主義の考え方に基づく。
最初の兵役を拒否すると3年以下の実刑に処せられる。予備役を拒否しても重い罰金が科せられる。
敵意と苦難
多くの兵役拒否者にとって、投獄や罰金は、厳しい試練のはじまりに過ぎない。兵役は、社会的に愛国的義務と考えられている。背景には、朝鮮半島の治安情勢がある。兵役義務を果たさない男性たちは、裏切り者の烙印を押されることが多い。
経済情勢の厳しさが増し若者は深刻な就職難に直面しているが、兵役拒否は犯罪歴として残るため採用を拒否されることが多く、2度処罰を受けるようなものだ。
この犯罪歴があるために、政府系機関の多くは良心的兵役拒否者を雇用しない。主要な民間企業は、採用に際し、就職希望者に兵役の詳細説明を求めるのが通例だ。
代替服務規定
兵役に替わる正当な制度がないために、若い男性は国に奉仕する機会を奪われている。
2007年に、韓国国防部は、「2009年までに、良心的兵役拒否者のための代替役務規定を導入する」と発表した。だが、2008年2月の大統領選挙後、政府は国民の支持が得られないことを理由に、この計画を無期限に保留すると発表した。
国際法では、すべての人には、刑罰などの罰を受けることなく、良心もしくは個人的な強い信念を理由に兵役を拒否する権利が認められている。
アムネスティは、韓国政府に以下を要請する。
- 良心的兵役拒否者が、懲罰を目的としない、あくまで非軍事的性格の、適切な代替役務に就くことができる規定を設けること。
- 良心に従って兵役を拒否したために投獄されているすべての人たちを即時、無条件に釈放すること。
- 良心的兵役拒否者全員の犯罪記録を抹消し、相当額の賠償金を支払うこと。
アムネスティ国際ニュース
2015年5月13日
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