- 2015年4月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:中国
- トピック:女性の権利
暴力を振るう夫を殺害して死刑判決を受けた妻を減刑しようとする一方で、女性の権利のために活動する者たちを弾圧し続けている。女性の暴力に対する当局の姿勢は、矛盾している。
中国の四川省の裁判所は、夫の殺害容疑で死刑判決を受けていた妻李彦さん(41才)に2年間死刑執行を延期する決定を下した。この死刑判決は、模範囚なら2年後に服役刑に減刑されると思われる。最高人民法院が昨年6月、前例がない再審命令を出し、今回の前進につながった。
李彦さんの死刑執行猶予は、今後の家庭内暴力が減刑要素となる同様のケースで、画期的な判決となるだろう。最高位の裁判所は今回のケースで、裁判官は家庭内暴力を看過してはならないという考え方を明確に示した。
同時に、女性への暴力を阻止する活動をする女性たちに対する容疑を依然として取り下げないのは、今回の決定に大きな陰を投げている。
家庭内暴力に適切な対応を当局に求める運動の中心的な存在であった女性活動家5人は、4月13日に釈放されたが容疑は晴れないままである。5人は、韋婷婷(Wei Tingting)さん、 王曼(Wang Man)さん、 武嵘嵘(Wu Rongrong)さん、 李婷婷(Li Tingting)さん、鄭楚然(Zheng Churan)さん。3月8日の国際女性デーに合わせて女性へのセクハラに関心を集める行動を計画していたが、実施直前に拘束された。
アムネスティは、当局に女性たち全員の容疑をすべて取り下げ、行動の自由を完全に回復するよう求めている。
当局が女性への暴力問題を本気で改善しようとするのであれば、活動家を迫害するのではなく、彼女らとともに闘うべきである。
李彦さんは2010年末に夫を殺害したとして2011年8月、死刑判決を受けた。長期にわたり凄惨な暴力を受けた証拠があるにもかかわらず、裁判所はそれを無視した。事件前に本人が保護を要請していたのに、警察がなんら対応しなかったのと同じだ。
この死刑判決に対して、中国内外から激しい抗議が起こり、家庭内暴力に真剣に取り組んでいない中国当局に注目が集まった。中国政府の調査によると、全女性の25%が家庭内暴力を受けている。
3月には、最高人民法院が家庭内暴力事件への新たな指針を発表した。そこには、家庭内の虐待者に対して罪を犯した虐待被害者の量刑に関する提言もあった。
8月には、家庭内暴力の被害者に対する賠償を規定した初の法律が誕生する。「北京+20」UN Womenキャンペーンの一環として、世界の首脳が女性の権利を話し合う国連会議が9月に中国で開かれ、中国はその共同議長を務める。法制化はその2週間前である。
習近平国家主席は恐らく、国連の舞台で女性の権利の進展を宣伝しようとしているのであろう。人権政策の前進を触れ回る一方で、女性活動家たちを容疑者扱いし続けるのは、何とも浅ましい行為である。
アムネスティ国際ニュース
2015年4月24日
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