- 2015年4月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:チェコ
- トピック:子どもの権利
アムネスティは4月23日に公開した報告書の中で、チェコのロマの子どもたちが学校で日常的に差別され、分離されている実態を明らかにした。同国の教育制度にはロマに対する根深い偏見があり、この偏見に対して政府が適切な対策を怠ってきたためである。
ロマの子どもたちの多くは、自分たちだけの教室や建物、学校に分離されたり、軽度の精神障がいを持つ子どもたちと同じ学校に通わされたりして、普通の学校の授業を受けることができないでいる。一方で、さまざまな人種の子どもが通う学校に行けば、いじめや嫌がらせに遭う。
全国的に実施されているこの分離政策は、制度に根付く偏見が生んだ、何ともおそろしい産物である。同時にこの政策の中で学校は、低年齢のうちから子どもたちに辛辣な差別意識を刷り込む。
チェコ政府は長年に渡り、適切な対策を取ってこなかったが、これはEU法や人権法に違反するだけでなく、何万人ものロマの子どもたちの可能性を奪っている。これは、人種差別以外のなにものでもない。
2014年9月、欧州委員会は、チェコ政府がEUの差別禁止法に違反したとして、前例のない措置に踏み切った。現在、同委員会は、チェコがどの程度この問題に対処しているかの評価を進めている。もし十分な対策を取っていなかった場合には、欧州司法裁判所に提訴することになる。
分離教育の実態
ロマの子どもたちは、当たり前のように軽度な精神障がいがある子どもたちが入る特別支援学校に入れられ、十分な学習の機会が与えられていないことが、アムネスティの調査でわかった。
チェコの人口に占めるロマの人びとの割合は3%に満たないにも関わらず、特殊支援学級の子どもたちの3分の1は、ロマの子どもたちだ。
アンドレは、5年生のときに特殊支援学級に入れられた。今15才になったが、「なぜここにいるのか、納得できない」と語った。「特殊支援学級に入れて、僕らを馬鹿にしてしまうんだ。ごく単純な仕組みさ。授業のペースは遅いから、ここからいい高校に行けるわけがない」
「通常」学校に通うロマの子どもたちにも、分離の壁が立ちはだかる。多くがロマ専用の学校に行くか、人種混合学校で別の建物や教室で授業を受けるはめになっている。
学習支援といじめ防止への無策
混合教育の通常学校にいるロマの子どもたちは、しばしば同級生や教師から、異なる扱いを受ける。また、多くのロマの子どもたちがチェコ語を母語としないが、語学学習の支援を受けられない。
ペトロはダイーンにある混合学校に通う5年生だが、よくいじめに遭うという。「クラスメートは僕がロマだからいじめるんだ。先生は何もしてくれない。一度先生に言ったら、僕が先にしかけたからだと責められた。先生は僕らを平等に扱ってくれない」
不十分な取り組み
2015年2月、チェコ政府は特別支援学校の廃止と、教育財政支援の見直しを行うと発表した。しかしこれまでのところ、具体的な実行計画や、明確な実施スケジュールを示していない。同政府は過去にも空約束を繰り返してきたため、差別はもう何十年も続いている。
アムネスティはチェコ政府に対し、約束した政策を監視・実行すること、また学校監査官の職権を強化し各学校の責任を追及できるようにすることを求めている。
アムネスティ国際ニュース
2015年4月23日
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