- 2014年9月 5日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:メキシコ
- トピック:
報告書では、2010年から2013年末までの間に7000件以上の拷問と虐待などの申し立てを同国の人権委員会がどのように受けたかを詳述した。 © Claudia Daut/Reuters
メキシコでの拷問と虐殺の件数がこの10年で6倍に増加し、歯止めがきかなくなっていることがアムネスティ・インターナショナルの報告書で明らかになった。アムネスティはメキシコ政府に対し、警察や国にまん延する拷問の風潮に直ちに歯止めをかける対策を取るよう求める。
拷問や虐待の急増だけではなく、それらの行為を容認し罪に問わない風潮も根深い。連邦裁判所が拷問を有罪としたケースはわずか7件しかなく、最高裁レベルではさらに少ない。
虐待のまん延は、虐待を受ける可能性が同国のすべての人びとに重くのしかかっていることを意味している。アムネスティの独自調査で、メキシコ市民の64%は、当局に拘束されたら拷問を受ける恐れがある、と考えていることがわかった。
現在、アムネスティは世界で「拷問なんて、いらない!」キャンペーンを展開しており、メキシコは、特に重点的に取り組んでいる5カ国のうちのひとつだ。
報告書では、2010年から2013年末までの間に7000件以上の拷問と虐待などの申し立てを同国の人権委員会がどのように受けたかを詳述した。2014年には申し立て件数が減少したと伝えられるが、発生率は10年前に比べて依然として高い。
アムネスティが聞き取りした各地の被害者は、警察や国軍による殴打、身の危険を感じる脅迫、性的暴行、電気ショック、手で首を絞めて窒息寸前まで追い込むといった暴行を受けたという。
黒人でホンデュラス人のアンヘル・アミルカル・コロン・ケヴェドさんは、移民であることとその民族的背景により、警察や軍の拷問と虐待を受けた。殴られ、ビニール袋を使って息ができないようにされ、裸にされ、侮辱的な行為を強要され、また人種差別的な言葉の暴力を受けた。拷問で強いられた供述をもとに起訴され、今は刑務所で公判を待っている。
今回の報告書では、アンヘル・コロンさんのようなケースを20件以上、記録した。
刑事司法制度は、法律が禁止しているにもかかわらず、恣意的拘禁や拷問によって得られた証言を証拠として採用してきた。その結果、拷問や虐待が助長されるばかりでなく、司法制度の信頼性を揺るがし、刑事事件の被告の人権を脅かす不公平な裁判と不当な判決がますます横行することになる。
拷問疑惑に対して信頼に足る十分な調査がなされないのは、被害者に対するさらなる虐待である。もし当局が虐待の証言に耳を貸さなければ、被害者は救済手段を失い、「自白」が強要によって引き出されたことを証明することは不可能となる。
拷問と虐待の容疑に関する捜査を根本的に見直す時だ。とりわけ国際的に認められているイスタンブール議定書(拷問等の行為に関してどのように証拠保全すべきかを記した国連の公式文書)が定める基準を適用すべきだ。またメキシコ当局は、裁判において独立した立場の医療専門家が集めた証拠を採用されなければならない。
報告書はまた、拷問と虐待の予防、捜査や処罰のためにとるべき一連の方策を提言している。まずは政府が拷問のまん延を認め、この深刻な人権侵害を最優先の課題として取り組む決意を公にすることから始めるべきである。
アムネスティ国際ニュース
2014年9月4日
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