- 2013年12月 3日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ロシア連邦
- トピック:
外国エージェント法は、プーチンの弾圧的政策の中核をなす。(C) AP Photo/Sabelo Mngoma
1年前に発効した外国エージェント法が、ロシアのNGOを苦しめている。
外国エージェント法は、プーチン大統領が復帰後に施行した数多くの弾圧的法律の中核をなす。人権や選挙監視、その他の分野で活動するNGOを悪者に仕立て上げ、社会の評価を落とすことを狙ったものだ。
同法がもたらした影響は凄まじい。1000以上のNGOが家宅捜査を受け、多数が警告をうけた。いくつかの有名な人権団体は罰金を科せられ、閉鎖に追い込まれたところもある。
海外から資金を受け何らかの「政治的活動」に携わっているNGOなどの団体は、同法の下で「外国のエージェント」として登録する義務を課されている。しかし「政治的活動」とはなにか、その基準はあいまいである。
対象となる団体は多岐にわたり、市民的、政治的、社会的、経済的権利に関わるNGO、環境問題に取り組むNGO、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の差別問題に取り組むNGOなどの活動が影響を受けている。
ソチ冬季オリンピック開催を間近に控え、世界中のアムネスティの会員や支援者がますます悪化する人権問題を世界に訴えるキャンペーンを行っている。
ロシアでも多くのNGOが、「外国エージェント」の烙印を押されることに反発して一斉に声をあげた。 そんな中、2013年の春と秋には1000以上のNGO団体への事前通告もなく大規模な家宅捜査が行われ、当局寄りのメディアがこれらの捜査を大きく取り上げた。
選挙監視団体「ゴロス(声)」は、同法により数カ月間の職務停止処分と多額の罰金を科された。法廷に持ち込んだが徒労に終わり、組織は解散に追い込まれた。市民の社会参加を支援するコストロマセンターも、法外な罰金を払えず、同じく閉鎖させられた。LGBTI映画祭を主催した団体も同様だった。法廷で勝訴したときにはもはや罰金の返還を求めることができず、正式に閉鎖に追いこまれた。
一方、11月の第4週だけでもモスクワに拠点を置く5つのNGOが、外国エージェント法による当局の圧力をかわそうと裁判で争っている。
同法による影響は、枚挙にいとまがない。
- 少なくとも10以上のNGOが「外国エージェントとしての機能を果たす組織」として登録していなかったため当局に訴えられた。
- 少なくとも5つのNGOが必要書類を提出しなかったために管理違反と見なされ、訴えられた。
- 少なくとも10以上のNGOの代表者が外国エージェント法に従うように命じられた。
- 少なくとも37のNGOが、「外国の資金を受け、勝手な政治活動を続けるなら法に触れる」と、正式な警告を受けた。「外国エージェント」として登録せずにロシアの人権情報をオンラインで発信する活動も含まれている。
NGOの代表者らはこの法律に対しての不満を語った。市民のさまざまな権利を守るNGOのドン河女性同盟は、地元民の家族、労働、住宅、年金などといった日常の問題についてアドバイスをしている。このグループは「外国エージェント」の登録を拒否したため近日中に出廷しなければならない。
「私たちは何ら恥ずべきことはやっていないし、自分たちの仕事に誇りを持っている。グループの閉鎖は多くの人たちに影響を及ぼすだろう」と代表者のバレンティナ・チェレバテンコさんは語った。
ロシア全土で運動を展開している「人権のための活動」のレブ・ポノマリオブ代表は、「もし閉鎖に追い込まれたなら、ロシア中の何千もの人びとが被害を受ける。さらに他のNGOも活動停止を余儀なくされたら、その数は万単位となり、市民社会の悲劇となる」と語った。
外国エージェント法は、集会と表現の自由に対する権利を保護する国内および国際的な義務の違反であり、ただちに廃止するべきである。
アムネスティ国際ニュース
2013年11月20日
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