- 2013年11月 1日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:大韓民国
- トピック:
政府当局と韓国電力公社は送電網建設が人びとへ与える影響について十分な情報を提供し、影響を受ける地域住民に誠意ある説明会を実施するべきである。その上で、住宅や生活の十分な補償や代替を提供する必要がある。
釜山発電所からソウルに電力を送るこのプロジェクトでは、韓国南東部の密陽市にある5つの村に、765kVの送電塔69基と電線39.15kmを設置する計画である。
村民たちの話では、2005年の説明会では、最も影響を被る人たちが説明会に呼ばれなかったり、説明会での情報提供が不十分だったりした。
事業に関連する法律では、説明会や補償の対象は、送電塔から30m以内、電線から3m以内の土地所有者だけという、影響を受ける人びとのごく一部だった。電力会社は、影響を受ける全村民の0.6%が説明会に参加したと当局に報告している。その一方で、より広範な地域の住民たちが建設を前にすでに経済的な影響を受けている。また、健康被害と環境への影響に対する不安を取り除くような説明もない。
住民がアムネスティに語ったところでは、住民たちは説明会の案内を受けおらず、説明会のことは知らされていなかった。一方、出席した人たちは、説明会の意図がよくわからなかったという。一方的な青写真を見せられ、計画が小規模で悪影響は最小限だという印象を受けたとのことだ。
同社は2010年以降、同規模の他の送電塔が住民の健康に及ぼす影響を内部報告書としてまとめていた。今年、その報告書が関係議員には配布されたが、一般には公表されなかった。今回の説明会でも配布はされなかった。
村民たちには、問題の送電塔が自分たちの生活や権利にどんな影響を与えるか、適時かつ全面的な開示を求める権利がある。さらに、全住民へのリスクは、村民自身を巻き込み、住民の視点と知識を考慮しながら、評価されなければならない。送電網建設計画は、独立・中立的な立場の人権・環境アセスメントを受けなければならないし、その結果は公表するべきである。
人権擁護活動家に関する国連特別報告者マーガレット・セカッギャさんは5月末から6月にかけての訪韓後、次のように指摘した。「密陽市の住民のように、当然の権利として大規模な開発に反対する人びとが、大きな壁にぶつかっている」
村民の大半は60歳、70歳代である。アムネスティは、韓国電力公社の計画に抗議している彼らが警察による嫌がらせや逮捕の脅しを受けていることに、深刻な懸念を抱いている。警察が恣意的に力を行使して村民や支持者が座り込み抗議の場に近づけないようにしているのは、表現と集会の自由の不当な制限である。今年10月半ば以降、村民や人権擁護活動家など14人が、刑法の「業務妨害」にあたるとして逮捕された。平和的な集会の権利を行使したことが、不当にも犯罪と見なされたからだ。
アムネスティは、韓国政府と韓国電力公社に以下の通り要請する
- 誠意ある説明会を実施し、リスクアセスメントが終わるまで計画を中断すること。
また、政府に以下の通り要請する。
- 住民に影響を及ぼす「電源開発と促進法」(1978年)のような法律と基準を、直接影響を受ける住民が中身のある説明会を受けられるものにすること。
- 影響を被った人が、失った家屋や生活手段の補償や代替を受けられるようにすること。
- 平和的に抗議して逮捕された人を全員、速やかに釈放すること。
アムネスティ国際ニュース
2013年10月24日
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