- 2013年1月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:サウジアラビア
- トピック:死刑廃止
アムネスティとスリランカ政府は、死刑判決を承認したアブドゥッラー国王に寛大な措置をとるよう要請していた.(C) Ishara S.KODIKARA/AFP/Getty Images
サウジアラビアで1月9日、スリランカ人の家事労働者の斬首刑が執行された。彼女がまだ子どもであったときに犯したとされる罪での、処刑である。このたびの処刑は、ペルシャ湾のこの王国が、死刑に関して国際基準に相反していることを、あらためて示した。
リザナ・ナフィークさんは9日の朝、首都リヤドの西方の町ダワミで、処刑された。ナフィークさんは17歳のとき、世話をしていた乳児を殺害した容疑で、2007年7月16日、ダワミ裁判所により死刑判決を言い渡されていた。
アムネスティとスリランカ政府は数日前、死刑判決を承認したアブドゥッラー国王に寛大な措置をとるよう要請したばかりだった。罪を犯したとされる当時、17歳という若年だったこと、また、裁判が不公正だったという懸念からだ。
当局にナフィークさんの死刑判決の見直しを要求する多くの嘆願が寄せられたにもかかわらず、死刑を執行したことで、サウジアラビアが死刑適用に関する国際的義務にまったく与していないことが、あらためて証明された。
子どもの権利条約の締約国として、サウジアラビアは、犯行年齢が18歳未満で後に有罪と判定された者に、死刑判決を下すことは禁じられている。もし年齢に疑いがある場合は、検察側が被告人を成人であることを証明できない限り、裁判所は子どもの犯罪者として取り扱わなければならない。
処刑される直前、スリランカのラジャパクサ大統領はサウジアラビア国王に寛大な措置をとるよう要請した。また、死刑執行の知らせが届いた9日、スリランカ議会は1分間の黙祷を捧げたという。
ラジャパクサ大統領とスリランカ政府は、同国の外務省のウェブサイトで、今回の斬首を「遺憾だ」とする声明を発表した。
不公正な裁判への懸念
ナフィークさんは2005年5月、家事労働者として仕事をするためにサウジアラビアに入国した。そのときパスポートには「1982年生まれ」とあり、当時23歳であった。しかしながら出生証明書には「1988年の生まれ」とあるため、乳児の死亡時に、彼女は17歳だったことになる。
アムネスティが収集した情報によれば、2007年の裁判の第一審で、出生証明書も他の年齢証明証拠も、提示を認められなかった。その後の司法手続きでは認められたが、子どもの成人年齢の裁量権を持つ裁判官の判定には影響しなかったようだ。
しかも、法廷でナフィークさんのタミール語の供述をアラビア語に訳した通訳者は、両言語間の通訳能力が不十分だったようだ。通訳者はその後、サウジアラビアを出国した。
ナフィークさんには、起訴前の取り調べでも2007年の法廷でも弁護士がつけられなかった。当初、取調べ中に、「赤ん坊を殺した」と自白したが、後に、「身体的暴行を受け、自白を強要された」として、自白を撤回した。そして、「乳児は哺乳瓶からミルクを飲んでいて、死亡の原因はミルクが喉につまったことだ」と主張した。
広範囲な死刑適用
サウジアラビアは広範囲な犯罪に死刑を適用する。また、ここ数年に処刑された人びとの多くは外国人で、そのほとんどが貧しい開発途上国からの出稼ぎ労働者である。
とくに、同国の死刑裁判の訴訟手続は、公正裁判の国際的水準よりかなり劣る。被告が正式に弁護士を立てることはまず認められず、自分の訴訟がどうすすんでいるのか、全くわからない場合が多い。
アムネスティの記録によれば、サウジアラビアでは2012年に少なくとも79件の死刑執行があった。そのうち27人は外国人だった。2013年に入りすでに2人が処刑され、2人とも外国人であった。
アムネスティは、いかなる場合でも死刑に反対する。
アムネスティ国際ニュース
2013年1月9日
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