- 2012年7月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シンガポール
- トピック:死刑廃止
シンガポール政府が、薬物取引と殺人事件に対して裁量的な選択の余地がない「絶対的法定刑としての死刑」を廃止する動きをみせている。今回提出された改正法が実施されるまで、死刑の執行は一時見合わされるという。アムネスティはこれを歓迎する。
絶対的法定刑としての死刑は、国際法で禁じられている。アムネスティは、シンガポール政府に対し、無条件に絶対的死刑判決を廃止するよう訴えている。
絶対的法定刑としての死刑判決によって、裁判官は裁量的な選択や事件の状況を情状酌量する余地がなくなる。絶対的法定刑としての死刑は、人命を個人の裁量で剥奪し、残虐で非人道的、かつ品位を傷つける刑罰であるとして、国際人権法でも禁じられている。世界の多くの裁判所や司法機関は、絶対的法定刑としての死刑判決を違憲としている。
今回提出された法改正案は、現在シンガポールで死刑執行を待つ人びとの命を救う鍵となる。特にマレーシア人のヨング・ヴイ・コンのケースは、死刑執行が差し迫っている。ヨング・ヴイ・コンは2007年に逮捕された当時、19歳だった。彼は、ヘロイン47グラムを所持していたとして絶対的死刑判決を受けた。シンガポールの現行法では、これは薬物取引と見なされ、有罪では必然的に死刑が言い渡される。
ヨング・ヴイ・コンは、シンガポールへ規制薬物の運び屋を自分に持ちかけた首謀者らしき人物の身元を供述している。首謀者とされるシンガポール人への罪状は、取り下げられている。ヨング・ヴイ・コンのケースは、国際的な関心と外交関係上の懸念を呼んでいる。
アムネスティとアジア死刑廃止ネットワーク(ADPAN)は、マレーシアとシンガポールの地元団体とともに、シンガポール政府に対してヨング・ヴイ・コンの判決を減刑するように訴えている。
アムネスティは、いかなる場合も死刑に反対している。死刑は生命権を侵害し、残酷で非人道的かつ品位を傷つける究極の刑罰である。アムネスティは、凶暴な犯罪がもたらす破滅的な影響を理解し、また犯罪被害者やその家族に同情する。
しかし、犯罪を減らすために、死刑が他の刑罰よりも効果的であることを示す証拠はない。犯罪の被害者は不当な裁判によって、二重の意味で被害を受けることがある。つまり、無実の人が処刑され、本来の犯罪者が裁かれないということだ。
アムネスティ・インターナショナル公式声明
2012年7月9日
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