- 2012年7月19日
- 国・地域:コンゴ民主共和国
- トピック:子ども兵士
国際刑事裁判所(ICC)は、トーマス・ルバンガ・ディロに禁固14年の刑を言い渡した。(c)REUTERS/Evert-Jan Daniels
国際刑事裁判所(ICC)は設立以来初の量刑判決として、武力紛争に子どもを徴用し子ども兵士として動員させた罪で、トーマス・ルバンガ・ディロに禁固14年の刑を言い渡した。これは国際司法上、歴史的な瞬間である。
この判決は、ディロが2006年の逮捕以来拘束されていることを考慮したものである。検察側は当初禁固30年を求刑していた。
この初の量刑判決は歴史的な瞬間と言える。子どもを徴用し兵士として使う者は誰でも起訴され、禁固刑に処されるということを全世界に示したものだ。
今日の判決は、国際刑事裁判所がきちんと機能していることの証だ。
検察側が容疑を子ども兵士の徴兵、入隊、戦闘動員のみに限ることにした。そのため、ルバンゴ・ディロの指揮下にあったコンゴ解放愛国者軍による性的暴力を含む他の犯罪容疑については審理されなかった。その結果、もっと多くの被害者が法廷で公正に正義を勝ち取り賠償金を受ける機会を奪われてしまったともいえる。
しかし、裁判所は3月に、すでに逮捕状を発行していたディロの部下の一人、ボスコ・ンタガンダの罪状にこれらの犯罪容疑を追加している。ンタガンダは現在、東コンゴの北キブ地方で武装集団M23を率いている。
今後の裁判では、判決を急ぐあまり被告の犯罪容疑の数を減らすようなことはせず、被告のすべての容疑を審理することが非常に重要だ。
今回の裁判では3人の裁判官のうちの1人が、この判決は徴用された子どもたちが受けた残忍な暴力と性的刑罰によって子どもたちやその家族が受けた心身の傷の深さを全く無視している、という理由で裁判官の判決決定の多数意見に反対したという手紙を書いた。
しかし、エイドリアン・フルフォード裁判長は、ディロが犯した罪は残虐であったが、判決は彼が公判中協力的であったことを考慮にいれたものであると述べた。
ディロは2002年から2003年の間、コンゴ解放愛国者軍(FPLC)に子どもを強制的に徴兵した罪で2006年の3月に逮捕された。裁判は2007年に始まる予定だったが実際に開始されたのは2009年で、最終的に有罪判決が下されたのは2012年の3月だった。
多難な被害者への賠償
ディロはコンゴ愛国者同盟(UPC)の創始者でまた代表者でもあり、その武装組織であるFPLCの最高司令官であったとされている。FPCLは子どもたちを誘拐し兵士として動員したことを含め数々の人権侵害に関わった。外国の武装集団とコンゴの武装集団との戦闘への子ども徴兵と動員はいまだに続いている。コンゴ国軍も子ども兵士を動員したことがある。ボスコ・ンタガンダが率いるM23軍は、子どもを含む市民を強制的に徴用し続けている。アムネスティは、M23軍に参加することを拒んだ市民が殺害されたという報告をいくつか受けている。
こういう犯罪の被害者たちへの賠償手続きがこれから始まる。しかし、裁判の判決が比較的限られた犯罪にのみ下されたものであるため、起訴した犯罪容疑がもっと広かった場合より、賠償金を受けられる被害者の数が少なくなってしまった。実際、その数はこれらの加害者たちによって虐待を受けた子どもたちの数のほんのわずかでしかない。
賠償金にしても、検察側はルバンガが犯した罪への賠償金にあてるだけの資金を彼の資産から回収することさえできなかった。そのため、賠償金支払いの責任はICCの「被害者救済信託基金」と各国政府が負うことになる。
3月にルバンガに有罪判決が下されたのをきっかけに、ICCの準備金は15万8000ポンド(20万ユーロ)から95万1000ポンド(120万ユーロ)に増えた。それでも、賠償金請求のすべてに応じるのは、世界的財政危機の中で各国がこういう基金への拠出金を減らしている状況からみて、難しいことになるであろう。
アムネスティ国際配信ニュース
2012年7月12日
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