- 2012年6月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:変革を求める中東・北アフリカ
シリア軍は、ますます戦闘ヘリを使用するようになっている(C)AI
シリア陸軍がヘリコプターの使用を増やしていることは、市民をさらなる危険にさらすことになる。ますます、国際的な武器禁輸の必要性が高まっている。
アムネスティ・インターナショナルは6月19日に発表した報告書で、シリアに攻撃用ヘリを運ぶロシア船が、北海で足止めをくっていたことを明らかにした。
英国外務省は同日、「船が、改装されたロシア製攻撃用ヘリの荷を運んでいた事実は、把握している」と述べた。その船は、積荷の保険が無効になり、ロシアに戻る途中であるという。
「ここ数週間、シリア軍と反政府武装勢力の間の対立が激化するにつれ、シリア軍側は一層戦闘ヘリを使用するようになっているようです。その結果、市民の死傷者が増えています」と、シリア北部でヘリの無差別攻撃の被害者と面談した、アムネスティの上級危機アドバイザーのドナテラ・ロヴェラは、述べている。
「この状況は、シリア政府に攻撃用ヘリを供給し、また補修・改修するということは、人道無視もはなはだしいを表しています」と非難している。
このヘリ輸送問題は、国連加盟国が実効性のある武器貿易条約に合意する必要を強く迫っている。この条約が締結されれば、人権を守り、深刻な人権侵害や国際的犯罪に使われる可能性が高いところへの武器の移転に歯止めをかけられる。条約の最終交渉は、数週間で始まる。
今年の4月と5月に行ったシリアでの調査で、アムネスティはヘリが、地上戦での援護射撃や偵察に日常的に使われていることがわかった。
ヘリは、機関銃で銃撃やロケット弾の砲撃にも使われてきた。他の武器の場合でも同様で、シリア軍はヘリを無差別に使うため、市民の死傷者を出している。
調査時にアムネスティは、さまざまな地域を訪問した。そこで住民は、軍が多くの戦車や武装した車を使ってどのように町や村を掃討したのかを説明してくれた。掃討戦の中には、援護する戦闘用ヘリが、無差別に銃撃し、逃げる人びとを狙い撃ちすることもあった。
イドリブの東にあるタフラナツの女性(23才)は、「4月3日、町から脱出しようとしたところ、ヘリから機関銃で大腿部を撃たれたらしい」とアムネスティに話してくれた。
「軍が町に入ってきたので、私と姉妹、夫の姉妹と子どもたちはみな、父の軽トラックに乗って、町の外のどこか安全なところへ避難しようとしていました。他の住民もやはり避難しようとしていました」
「そこへヘリが、上から撃ってきたんです。ちょうど町を出たあたりで、私は大腿部を撃たれました。周辺には軍はいなかったので、その銃撃は多分、ヘリからだと思う。もう、ほんとうに怖かった。ちょうど、赤ん坊の息子を膝の上に抱いていましたから。息子に当たらなかったのは、とても運が良かったとしか言いようがありません」
アレッポの北にあるアナダンに住む、幼子8人を養う建設労働者(41才男性)も2月末、午後遅く仕事から帰宅途中にヘリから両足を撃たれた、とアムネスティに語っている。
アムネスティは、アナダンの他の住民からも同じ日に、ヘリに搭載の機関銃で撃たれ、負傷したという証言を得た。
アムネスティは、国連安保理事会に対し、シリアへの武器流入を止めさせるために、即時に武器禁輸措置を課した上で、その措置を遵守しているかを監視する実行的なしくみをつくるように要求している。
そのような禁輸措置がいまだ存在しない中、すべての国々は直ちに、シリアに全ての武器、弾薬、軍隊、治安および警備のための設備・備品、訓練、人員の移転を停止すべきである。反政府武装勢力に、武器の供給を検討している国々は、供給した物資が人権侵害や戦争犯罪に確実に使われないようにするしくみを設けるべきである。
▼シリアの人びとのために、あなたができるアクションがあります
https://www.amnesty.or.jp/get-involved/action/syria_20120608.html
アムネスティ国際配信ニュース
2012年6月19日
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