- 2012年6月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
- トピック:
イスラエル当局は、多くのパレスチナ人を不当に拘禁している。 © ABBAS MOMANI/AFP/GettyImages
イスラエル政府は、長年存在する行政拘禁法により勾留されているすべてのパレスチナ人を釈放するか、もしくは迅速に彼らを起訴し、公平な裁判にかけなければならない。アムネスティ・インターナショナルは、新しい報告書の中でこのように述べた。
報告書『公正の欠乏:裁判なしにイスラエルによって拘禁されるパレスチナ人たち』は、行政拘禁に関わる人権侵害を記録したものである。行政拘禁とは、無期限に更新できる軍令に基づいて起訴や裁判なしの拘禁を認める、英国委任統治時代の遺物である。
報告書は、被占領パレスチナ地域の活動家たちの合法的、平和的活動を抑圧するためにこれらの措置を取ることを止めるようイスラエルに要請している。
報告書はまた、表現や集会の自由の権利を平和的に行使しただけで拘禁されている良心の囚人たちを即時無条件に釈放するよう求めている。
他の多くのパレスチナの囚人と同様に行政拘禁された人びとは、尋問中の拷問や虐待のような人権侵害の被害を受けてきた。その人権侵害には拘禁中の残酷で非人道的な処遇はもちろん、ハンガー・ストライキや他の抗議をする者への罰もあった。
加えて、行政拘禁された人びととその家族は、どれほど長く自由を奪われるか分からないという不確実さと、なぜ拘禁されているのか正確に知ることができないという不公正さを抱えて生きなければならない。
他のパレスチナの囚人たちのように、彼らは家族との面会禁止、強制移送、または追放、独房拘禁という問題にも直面している。
これらの行為は国際人権法と国際人道法の下でのイスラエルの義務に違反している。
イスラエルには適法手続と公平な裁判を受ける権利を保持し、被拘禁者に対する拷問や虐待を止めるために効果的な行動を取る義務がある。
イスラエルはまたすべてのパレスチナの囚人と被拘禁者たちに家族の面会を許可しなければならないし、強制移送や追放も止めないといけない。そして、イスラエルは違反行為を調査し、加害者を裁判にかけ、被害を受けた人びとに補償する義務がある。
「何十年もの間、アムネスティ・インターナショナルはイスラエルに対し、行政拘禁を止めて被拘禁者たちを釈放するか、国際的に認められた罪状で彼らを起訴し、国際基準に沿って裁くよう求めてきました」と、アムネスティの中東・北アフリカ副部長のアン・ハリソンは述べた。
4月末時点で、少なくとも308名のパレスチナ人たちが行政拘禁されている。その中には、パレスチナ立法評議会(PLC)議長であるアジズ・ドウェイクを含む24名の議員たち、ワリッド・ハナシェのような人権活動家たち、少なくとも4名のジャーナリストがおり、加えて大学生や研究員も獄中にいる。
ハデール・アドナンやハナ・シャラビのように行政拘禁されている人びとによる長期のハンストによって今年初め、行政拘禁の問題は国際的に注目されることとなった
彼らの非暴力の抗議は、4月17日に始まったイスラエルの獄中にいるおよそ2000名のパレスチナ人たちによる大規模なハンストにつながっていった。2000名の中の多くは実刑を受けているか裁判を待っている者たちであった。
アムネスティ・インターナショナルの報告書はまたハンストした囚人や被拘禁者たちに対してイスラエル監獄局(IPS)が取った措置を、医療訓練を受けたIPS職員による虐待を説明する被拘禁者たちのことと共に記載している。
エジプトによって仲介された協定後、大規模なハンストは2012年5月14日に中止された。しかし、ガザ出身のパレスチナのサッカー選手、マムード・アルサーサクは3月に開始したハンストを今も続け、70日を超えている。
彼は3年近く起訴や裁判なしにずっと拘禁されることに抗議している。彼はIPSの医療センターに拘禁されており、現在、生命が重大な危機にある。そこではそのような危険な状態にある患者に必要な専門医療が受けられない。
5月14日の協定で、イスラエルは10年間隔離拘禁されることになっていた19名の囚人たちの独房拘禁を停止すること、そしてガザ地区出身の囚人たちの家族との面会禁止を解除することに合意した。
「イスラエル当局は、『重大な新情報が出なければ』現在の命令が失効した際に行政拘禁されている者は釈放するという協定に合意した、と多くの報道機関が示唆していますが、起訴や裁判なしの勾留のことについては今まで通りというのが私たちの得ている情報です」とアン・ハリソンは述べた。
「この協定が締結されてからイスラエルは少なくとも30の行政拘禁命令を更新し、少なくとも3つの新たな命令を出したと私たちは確認しています。そして、ガザからの囚人たちと家族との面会はまだ始まっていません」
「イスラエルの当局は同国と被占領パレスチナ地域にいるすべての人びとを、生命と身体の保全に対する脅威から守る義務があります。それも当局は人権を尊重するやり方でそうしなければなりません」とアン・ハリソンは述べた。
「イスラエルは行政拘禁の制度を、治安に対する極度に差し迫った危険をもたらす人びとに対する例外的手段として考え、何十年も被拘禁者の人権を踏みつけるために使ってきました」とも述べた。
アムネスティは、世界中で行政拘禁に反対するキャンペーンを行なっている。近年では行政拘禁の虐待的システムについて記録してきた。そして、スリランカやエジプト、中国、インド(ジャンム・カシミール)などの国における行政拘禁を停止するよう要請してきた。
報告書『公正の欠乏:裁判なしにイスラエルによって拘禁されるパレスチナ人たち』(英文)
アムネスティ国際配信ニュース
2012年6月6日
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