- 2011年12月20日
- 国・地域:朝鮮民主主義人民共和国
- トピック:
「キム・ジョンイルは、同氏の父親がそうであったように、同国を貧困に陥れ、国民に十分な食糧や医療を与えず、数十万という人びとを収容所に拘禁してきました」と、アムネスティのアジア太平洋部長であるサム・ザリフィは述べた。
「この政権移行によって、新政権が、過去の恐ろしい、破綻した政策を放棄することを、アムネスティは望んでいます」
しかし、アムネスティが最近受けた報告によると、キム・ジョンウンの継承に脅威と見なされた数百人の政府関係者が、粛清されたという。彼らは処刑されたり、政治囚収容所に収監されたようだ。
「過去1年にわたってアムネスティが収集した情報によれば、キム・ジョンウンとその支持者は、抑圧を強化し、体制批判の可能性を徹底的に押しつぶすことによって、新たな支配体制を強固なものにしていこうとしているようです」
1994年にキム・イルソン(金日成)が死亡し、息子であるキム・ジョンイルが同国の指導者として後を継いだ。その直後の数ヵ月の間に、政敵と見なされたり、あるいはその可能性があると見なされた数万人、そして彼らの家族らが、政治囚収容所に送られた。また反体制派の人びとは、不公正な裁判によって、あるいはまったく裁判が行われないまま、秘密裏に、もしくは公の場で処刑された。
アムネスティは長年にわたり、同国の悲惨な人権状況を記録してきた。
同国においては、表現と結社の自由はほとんどない。国家体制に反対すると見なされた数十万人が、ヨドク政治囚収容所などの悪名高い収容所に囚われている。そうした収容所には、家族の三世代までが一緒に収容されている。囚人たちは、1日12時間にのぼる重労働を強いられている。
一方、同国では人口の3分の1が食糧不足に苦しんでおり、医療体制は危機的に後退している。人びとは木の皮や草を食べて飢えをしのいでおり、また未消毒の注射針の使用や、麻酔なしの外科手術が行われているという報告を、アムネスティは複数受けている。
「政府は、同国が強固で繁栄した国になりつつあると語っています。そうであるならば、新たな指導者は、人権状況の改善を重要な政策課題として取り上げ、キム・ジョンイル時代を特徴づけている抑圧に終止符を打たなくてはなりません」と、サム・ザリフィは述べた。
アムネスティは、同国政府とその支援国および機関に対し、同国において最も援助を必要としている人びとに十分な食糧を配給するよう、繰り返し訴えている。
「同国の人びとが、政治的不安定を理由に、これまで以上の貧困に苦しめられることがあってはなりません」
同国では、1990年代の半ばから、極度の食糧不足によって50万人近い人びとが死亡した。さらに数百万人、とくに子どもと高齢者が、慢性的な栄養失調に陥っている。このおもな原因は、キム・イルソンとキム・ジョンイル政権下で実施された、非生産的な政策にある。
朝鮮民主主義人民共和国の当局および新たな指導者は、人権状況の改善に向けて、以下の事柄に直ちに取り組むべきである。
・ すべての政治囚収容所に収容されている、すべての良心の囚人とその家族を、即時かつ無条件に釈放すること。政治囚収容所に囚われているすべてのその他の囚人については、国際的に明確な犯罪容疑で起訴しない限り、釈放するべきである。もしくは、独立した裁判所に差し戻し、彼らが公正な裁判を受けられるようにすべきである。
・政治囚収容所に囚われている人びとを含め、囚人に対する強制労働、拷問その他の虐待を直ちに中止すること。
・最も食糧を必要としている人びとに、食糧が届けられるよう、国連世界食糧計画など、国際的な人道支援機関に対する自由なアクセスを直ちに認めること。
・最も医療を必要としている人びとに、医療が施されるよう、国際人道支援を受け入れ、十分に協力して自由なアクセスを認め、医療制度の深刻な崩壊に対応すること。
・公開処刑および秘密裏の処刑を直ちに中止すること。
・過去および現在の拉致および強制失踪の疑いについて、十分かつ公正な、独立した調査を実施すること。
・憲法や関連する国際人権条約で謳われている、表現と信教の自由の権利を保障すること。
・国際人権専門家や国連人権委員会の定期審査による勧告を実施するために、直ちに行動を起こすこと。
・食糧に対する権利、表現のおよび宗教の自由の権利、そしてとりわけ同国の人権状況に関する国連の特別報告者など、独立した人権監視者を受け入れること。
▼関連資料
報告書『朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮):政治囚収容所の実態』
https://www.amnesty.or.jp/uploads/mydownloads/DPROK_Media_briefing_20110503_02.pdf
アムネスティ発表国際ニュース
2011年12月19日
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