- 2011年6月17日
- 国・地域:シリア
- トピック:変革を求める中東・北アフリカ
10代のサメル・アル・サリとナジル・アブド・アル・カデルは、殴打され、銃撃をうけた傷がもとで死亡した。この新たな2つの事件を証明するビデオ映像が、最近公開された。
「シリアの治安部隊が拘束した子どもたちを拷問し、殺害しているという報告を受けていますが、これが事実であるならば、シリア政府によるすさまじい弾圧のなかで最悪の事態が起こっています」とアムネスティの中東・北アフリカプログラムのフィリップ・ルーサー副部長は語った。
「暴力による子どもたちの死は、非常にショックです。現状シリア政府には、彼らの死に責任があるとされる治安部隊を抑制するような動きが見られません」
国際的なメディアは9日、一般人が撮影したビデオ映像を放送した。これは、その前日に、シリアのジーザ村に住む家族のもとに返された15歳のサメル少年の遺体を映した映像である。
サメル少年の姿が消えたのは4月29日。村人たちが、政府軍に包囲されたシリア南部の街デラアの支援に向かおうとした直後だった。その日、その地区では、約500人の人びとが逮捕されたとの報告がある。
ビデオによると、サメル少年の体には明らかに複数の弾痕があり、片目と複数の歯が欠けていた。さらに首と片脚も折れていたとのことだ。
3月以降、拘束中に死亡した少年はサメル少年で4人目だと伝えられている。ホムズ出身のディヤ・ヤーヤ・カティブ(16歳)とデラア出身のサレ・アフメド・アル・カテブ(14歳)が、それぞれ3月と4月に拘束中に拷問をうけて死亡した、とシリアの人権活動家は報告している。
シリアのデモの参加者は先月、13歳のハムザ・アル・カティーブが死亡したというニュースに衝撃を受けた。ハムザ少年は、4月29日のデラア近郊での大量逮捕中に失踪し、後日、空軍の安部隊に拘束されていると伝えられていた。
シリア政府は、ハムザ少年は武装集団の銃撃をうけて死亡し、家族のもとに返される間に遺体が腐敗したとして、ハムザ少年が拷問をうけ、遺体が切断された事実を否定した。
しかし、アムネスティが問い合わせた法医学の専門家は、ハムザ少年の遺体が映されたビデオを分析した結果、目視される複数の傷から、少年が生きている間に鈍器によってくりかえし暴行をうけたとの結論をだした。また少年は、明らかに至近距離から胸と腕に一発づつ銃弾をうけており、撃たれたときにはまだ生きていたことも判明した。
9日、アムネスティは、おそらく18、19歳のナジル・アブド・アル・カデルと推定される、また別の少年の遺体が映された録画ビデオを受け取った。遺体には虐待の痕が残されていた。
遺体を検死した医師によると、ナジール少年の膝の皿は砕かれ、頭蓋骨にはひびが入り、撃たれる前に首が折られていた。死亡したとき、ナジル少年は治安部隊に拘束されていたようだ。
現在、12歳から17歳までの約32人の子どもたちが、明らかに抗議行動の関連で拘束され、拷問その他の虐待をうける恐れがある。その中の最低9名は、シリア南部の町、デラアの出身である。
2月に始まった改革を求めるデモをうけ、シリア治安部隊は3月中旬以降、改革を求める人びとに対して暴力的な対応をとるようになった。アムネスティは82人の子どもを含め、少なくとも1104人が殺害されたと考えている。
これまでに数千人が逮捕され、そのうちの多くが独房に拘束され、拷問を受けていると報告されている。アムネスティは、数十年にわたってシリアの拘束施設で、拷問その他の虐待が繰り返されているという多くの申立てを記録している。
現在、国連安保理では、シリアにおける暴力について決議草案を協議している。
「国連安保理は、数カ月におよぶシリアにおける流血事件に対し、決然と対処しなければなりません。我々は、国際刑事裁判所に事態を付託すべきだと考えています」とフィリップ・ルーサー副部長は語った。
「シリア政府が真摯な態度で現行の国際法違反に対処しないのであれば、子どもたちを含む、政府に抗議する人びとの殺害や拷問に対して、国際社会が政府に責任を負わせなければなりません」
アムネスティ発表国際ニュース
2011年6月10日
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