- 2010年10月27日
- 国・地域:パラグアイ
- トピック:先住民族/少数民族
先住民族のサクマック・カセクは長年にわたって、先祖伝来の土地における居住権を認めるよう政府に訴えてきた。国内で求められる官僚主義的な手続きに従って20年もの歳月を無駄に費やしたあと、コミュニティは先祖伝来の土地の認知を求めて国際人権擁護団体に訴えざるをえなくなった。
アムネスティ・インターナショナルは、先祖伝来の土地に居住する権利請求を解決するための効果的かつ有効な仕組みを欠いていることが、パラグアイの先住民の権利を守るうえでの大きな障害となっていると考えている。
先住民族のサクマック・カセクは自分たちの土地を所有して自由に出入りすることができないために、狩猟や漁獲、採集といった伝統的な生活手段を剥奪され、非人間的な環境で暮らすことを余儀なくされている。判決は、避けようと思えば避けることができた理由で13人の先住民の生命が失われたことに対してパラグアイ政府には責任があり、また土地と自然資源を奪われたことが、先住民族の文化的独自性に悪影響を与えていると述べている。
判決では、米州人権裁判所は先住民の要求を受け入れ、コミュニティの土地返還請求に応じるべきパラグアイ政府の行動に遺憾の意を表し、パラグアイ政府は、「その行政手続き全般を通じて積極性に欠け、行動力がなく、努力を欠き、政府側が要求に応じてこなかったという特徴がある」とされている。
米州人権裁判所の司法権によって先住民の権利侵害で3度も非難されたのはパラグアイだけだ。さらにパラグアイは、ILO労働条約第169号を批准した際に、先住民族の権利に係わる一連の義務の履行も宣言している。
アムネスティは、この新たな判決に対して何らかの手段を講じるべく全世界の会員200万人の力を結集する所存であることをパラグアイ政府に思い起こしてもらいたい。パラグアイが自ら課した義務と、行動を求める米州人権裁判所からの3度にわたる要請を考えると、先住民族の権利をなぜ履行しないのか、パラグアイはもはやそれに対する有効な答えをもっていない。
2005年および2006年、裁判所は、先住民族ヤキエ・アクサとサウオヤマハのコミュニティに有利な判決を下した。本来、裁判所命令には拘束力があるのだが、どちらの命令もほとんど遵守されることはなかった。パラグアイ政府が先住民族の苦悩に終止符を打てるまで、2つのコミュニティを構成する約100の家族はコンセプシオン-ポゾ・コロラド・ハイウェイの傍にある細長い荒地に住み続けなければならない。
先住民族のコミュニティの存続は、先祖伝来の土地の返還とその地に見いだされた天然資源を活用し享受する能力の回復と密接に関連していることを、パラグアイ政府に思い起こしてほしいとアムネスティは考える。
追加情報
2008年からの公式統計によると、先住民族サクマック・カセクのコミュニティは、約60家族で構成されている。そのコミュニティは、パラグアン・チャコにある個人の牧場内の1万700ヘクタールを超える土地の返還を求めている。
2010年8月24日に下された多数決による判決は、生存権や人格の統合権、共同体的財産権、司法上安全と保護の権利、法人格の認定権、子どもの権利などが侵害されていることを認定した。コミュニティが生活しているきわめて危険な環境は、コミュニティが土地を所有していないことと切り離すことはできない。
先住民族にしてみれば、先祖伝来の土地を他人が所有していることになるために、ヤキエ・アクサとサウオヤマハのコミュニティは、長年、道路脇の仮設家屋に住まざるをえない。米州人権裁判所が下した判決が完全に実行されない限り、先住民族の存続は危険に瀕している。
長年、南北アメリカの先住民族は片隅に押しやられ、差別を受けてきた。自分たちの土地や生命、生活手段を左右する決定に際しても声を上げることもできず、鉱物その他の天然資源に富む地域に住んでいるにもかかわらず、あまりにも不均衡な困窮生活を強いられてきた。多くの国が先住民族の人権を容認し擁護しないなか、米州裁判所によるこの新たな判決によって、困窮のなかで生活を続ける地域の先住民族が直面するさまざまな困難があらためて映し出されたと、アムネスティは考える。
アムネスティ発表国際ニュース
2010年9月29日
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