- 2010年1月29日
- 国・地域:マレーシア
- トピック:危機にある個人
イブラヒムの裁判は、最高裁判所で2月2日に始まる予定である。当局が元副首相であるイブラヒムをこのような罪で起訴するのは、過去12年間で今回が2回目である。
1998年、当時の首相であったマハティール・モハマドに対してイブラヒムが公然と批判したことに伴い、彼は逮捕され、ソドミーと汚職の罪で有罪判決を受けた。有罪判決がくつがえされ、釈放されるまで、彼は6年間独房に監禁された。
「マレーシア当局は、野党の指導者を政界から追放するためにいつも同じ卑劣な手段に訴えてきた。マレーシアの司法は、このような告訴・告発を退けるべきである」とアムネスティ・インターナショナルのアジア太平洋部長のサム・ザリフィは述べた。
アムネスティは、2004年にイブラヒムが釈放される以前、彼を良心の囚人とみなしていた。
イブラヒムは汚職の有罪判決により、5年間公職に就くことを禁止された。彼は2008年4月にこの禁止が解けた後、同年8月26日に国会議員に当選し、野党・人民正義党(Parti Keadilan Rakyat)の党首に就任した。
しかし、選挙1カ月前の2008年7月17日、イブラヒムは元補佐官の男性とソドミー罪を犯したとして再び逮捕された。もし有罪になれば、彼は約20年間投獄され、国会議員の職を失うことになる。
マレーシアの刑法377B条に基づいてイブラヒムに科せられたソドミー罪は、国際人権基準に相反するものである。この英国植民地時代の法律では、投獄とむち打ち刑が規定されている。むち打ちは、拷問その他の虐待行為を禁止している国際法に違反する刑罰である。さらに、国連人権委員会は1997年に、ソドミー法は基本的なプライバシーの権利を侵害するとの判断を下している。
アムネスティは、イブラヒムの事件に関して公正な裁判が行われるかどうかを非常に懸念している。検察が予審の段階で被告人側への証拠引き渡しを拒否したことは、国際的な公正な裁判の基準とマレーシアの国内法に反する行為である。
「イブラヒムの裁判は、間違いなく国際社会と投資家の間で、マレーシア政府の司法と法の支配への姿勢について疑念を高めた」と、サム・ザリフィは述べた。
マレーシアの刑事訴訟法51A条は、検察は被告人側に有利な記録と供述書を引き渡さなければならないと規定している。国連人権委員会は、公正な裁判に必要な最低限の便宜として「被告人が裁判の準備のために要求した文書その他の証拠を入手できることを含めなければならない」定めている。
しかし、1月29日、マレーシア連邦裁判所は、アンワルの容疑を晴らすために役立つであろうと弁護団が考えた検察側の証拠の提供義務を支持しなかった。先の判決で控訴裁判所は、被告人側のこの証拠開示申請を「情報漁り」と呼んだ。
「重要な証拠を提供しないことを認めた裁判所の決定は、マレーシアの刑事事件において危険な先例をつくった。これが不公正な裁判のやり方である」と、サム・ザリフィは述べた。
アムネスティ発表国際ニュース
AI Index: PRE01/030/2010
2010年1月29日
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