- 2010年1月 6日
- 国・地域:イラン
- トピック:危機にある個人
「拷問や、強かん、国際法違反の殺害、その他の虐待などに関する数々の申し立てについて、イランの指導部は独立した調査が徹底的に行なわれるようにしなければならない」と、アムネスティ・インターナショナルの中東・北アフリカ部副部長ハッシバ・ハジ・サラウィは述べた。
「人権侵害に関与した民兵および当局者は速やかに責任を問われなければならないが、いかなる場合でも死刑が行われてならない」
アムネスティは、イランの最高指導者であるアヤトラ・アリ・ハメネイ師に対し、2人の重要な国連の人権専門家がイランを訪問し、調査に協力することを許可するよう要請している。
「最高指導者は調査が厳正で独立したものとなるよう、政府に命じて拷問および即決・恣意的処刑に関する国連特別報告者たちを招待させるべきである」と、ハッシバ・ハジ・サラウィは述べた。
「これまで様々なイラン当局から発表された調査は、真実の究明よりも人権侵害を隠蔽することに主眼を置いてきたようである」
今回の報告書では、6月に行なわれた大統領選挙以前、選挙期間中、そして特に選挙後に行われた人権侵害のパターンを説明している。選挙後、当局は民兵組織バシジとイスラム革命防衛隊を配備し、不正が疑われている選挙結果に対する大衆の抗議行動を抑え込んだ。
報告書には、抗議行動中に拘束された人びとの証言が含まれている。その中には、国外への脱出を余儀なくされた人もいた。
元被拘禁者の1人は、悪名高いカリザク拘置所におよそ58日間収容されていたが、その間ずっと運送用コンテナに入れられ、43日後にようやく家族と連絡を取ることが許されたという。
取調べの間、「自白」しなければ収容されている息子を強かんすると言われ、その後意識がなくなるまで棍棒で殴られた。コンテナには彼のほかに70人以上が収容されていたという。
別の被拘禁者アリ・ヘラディネジャドは、学生のアミール・ジャヴァディファーが、衣服が裂けた状態で額から血を流しているところを見たという。後にアミールは収容所内で死亡したことが分かった。拷問その他の虐待を受けた結果であることは明らかだった。アリはそのとき、どんなリスクを冒そうとも、このことを誰かに伝えようと決意した。
ハッシバ・ハジ・サラウィは、「当局はこの夏に行なわれた人権侵害と決別したことを示さなければならない。抗議行動の取り締まりは法の執行に関する国際基準に完全に従って行い、バシジやその他の重装備の軍隊を市街地から撤退させることを直ちに確約しなければならない」と述べた。
「逮捕または拘束された人は拷問や虐待から保護されなければならず、良心の囚人は釈放され、司法を愚弄する『裁判ショー』などの不公正な裁判で有罪とされた人びとは、再審理を受けるか、釈放されなければならない。すべての死刑判決は減刑され、まだ裁判を受けていない人びとには公正な裁判を受けさせなければならない」
抗議行動に対する弾圧は続いている。12月7日のイラン全国学生の日までの3週間、何十人もの学生活動家が拘束され勉学を禁じられた。学生の日には200人以上がデモ中に逮捕され、治安部隊による殴打があったほか、催涙ガスも使用された。
これまでに政府が行なってきた調査のレベルは、概して真実を明らかにするというよりは隠蔽することを目的としているように見られる。
イラン当局は、被収容者の処遇を含めた選挙後の危機を調査するために2つの組織を立ち上げた。議会委員会と司法三者委員会である。
両組織の任務と権限の詳細は明らかにされず、議会委員会の調査結果は公表されていない。
拷問に関する国連特別報告者であるマンフレッド・ノヴァクと、超法規的、即決および恣意的処刑に関する国連特別報告者のフィリップ・アルストンは、イラン入国を求め当局からの返事を待っている。
「当局は混乱の中で生じ広がった人権侵害に対し、オープンで透明性があり説明責任の果たせる方法で取り組む義務がある」と、ハッシバ・ハジ・サラウィは述べた。
選挙後の衝突における死者は、公式の数字では36人とされている。反対制派は70人以上とみている。
選挙後にイラン全国で少なくとも4千人が逮捕された。報告書作成の時点でまだ最大200人が収容されており、その中には最初の騒乱が静まった後で逮捕された者もいる。
アムネスティ発表国際ニュース
2009年12月10日
*報告書「イラン:選挙への異議、弾圧の激化(Iran: Election contested, repression compounded)」(英文)はこちらからご覧いただけます。
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