- 2009年9月10日
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
アムネスティは、新しい報告書「首に掛けられたロープ:日本における精神医療と死刑」の中で、日本において精神障害を持つ死刑囚に死刑が執行されていることは、日本が署名している、深刻な精神障害を持つ死刑囚を死刑から保護するよう義務づける国際基準に違反している、と強く批判した。
現在、日本では102人の死刑囚が、死刑が執行されるのかどうか、そして、いつ死刑が執行されるのか、その告知を待っている。法的手続きが終了した死刑囚は、死刑執行を待つ日々を強いられており、たった2、3時間前の事前通告で死刑が執行されうる刑罰に向き合っている。毎日毎日が彼らの最後の日になる可能性があり、そして、死刑執行令状を持った刑務官の到着が、数時間以内に行われる彼らの死刑執行を宣告することになる。何年も、時によっては何十年もこのような年月を生きる人びとがいるのである。
「長期間にわたって、受刑者を処刑の恐怖に日々さらされて生きる状況におくことは、残虐であり、非人道的かつ品位を傷つける行為である。日本において死刑囚に課される処遇は、彼らが死刑囚監房において、深刻な精神障害を発症する高い危険性にさらされていることを意味する」と、アムネスティの保健問題専門家で、この報告書の主執筆者であるジェームス・ウェルシュは述べた。
「死刑囚の処遇は、彼らが深刻な精神衛生上の問題を発症するのを防止するために、直ちに改善される必要がある」
日本の精神障害を抱える死刑囚の正確な人数は不明である。死刑制度と死刑囚の健康についての秘密主義と、独立した精神医療の専門家による調査の欠如が、死刑囚の精神状態を判定する方策として二次的な証言や記録に依拠するしかないという状況をもたらしている。日本政府は、死刑囚への面会を許可しない方針を取っており、アムネスティの死刑囚への面会要求を拒否している。
アムネスティは、死刑囚がお互いに会話をすることを許されておらず、厳格な隔離が強制されているとの情報を得た。死刑囚の家族や弁護士、その他の人びととの面会は、1回あたりたった5分程度に制限されている。トイレに行くことを除いて、死刑囚は、独房の中で動き回ることを許されておらず、座り続けていなければならない。死刑囚は、他の受刑者に比べて、新鮮な空気や光に触れる機会も少なく、彼らに課せられた厳格な規則に違反する可能性がある行為をしたという理由で、更なる処罰を受ける場合もある。
「こうした非人間的な環境は、死刑囚の不安と苦痛を増大させる。そして、多くの場合、死刑囚の精神的なバランスを失わせ、精神障害に追い込むことになる」とジェームス・ウェルシュは述べた。
アムネスティによる国際調査によれば、精神衛生上の問題に苦しんでいる人びとは、死刑に追い込まれる危険性が特に高いことが示されている。精神障害が、犯罪に関与してしまう一因となることもあり、効果的な法的弁護に関与する被告の能力を損ない、さらに、控訴を断念するという死刑囚の決断に重大な影響を与える可能性がある。
今回の報告書は、日本政府に対して、死刑廃止を念頭に置いて死刑の執行停止を行うよう求めている。また、日本政府に精神障害が関係しているかも知れないあらゆる事件を再調査し、精神障害を持つ死刑囚が死刑執行されないよう保証し、死刑囚の状況を改善するよう求めている。そうすれば、死刑囚が、精神衛生状態の悪化や深刻な精神障害の発症に苦しまずに済むのである。
アムネスティは、日本政府に対し、国際人権基準を遵守することによって、人権に対する確固たる責任を示すよう要求する。
アムネスティ発表国際ニュース
2009年9月10日
*報告書の全文は以下からご覧いただけます(英語のみ)。
http://www.amnesty.org/en/library/info/ASA22/005/2009/en
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