- 2009年5月 7日
- 国・地域:ロシア連邦
- トピック:
「1年前、メドヴェージェフ大統領は就任にあたり、法の支配を強化すると公約した」と、アムネスティ・インターナショナルの事務総長アイリーン・カーンは述べた。
「昨年、大統領はいくつかの目標を掲げたが、有意義な変化はいまだ見られない」
大統領就任当初、アムネスティは大統領に宛てた覚書の中で、ロシア国内で取り組む必要がある人権の課題について強調した。この覚書に対する返答はいまだにない。
1年が経ち、アムネスティはこの1年の人権に関する進展について評価した。いくつかの初期段階の措置がとられたにもかかわらず、状況が悪化した分野もある、とアムネスティは言及している。
法執行官による人権侵害や、市民活動家、ジャーナリスト、弁護士への攻撃に対する免責がはびこっており、確固とした市民社会の発展を阻害している。
北コーカサス地域はいまだに不安定さと武力衝突に象徴されている。同地域では、合法的であるはずの武装勢力による暴力への取り組みが国際人権法に反する手段により行なわれている。
人びとは依然として強制的に失踪または拉致され、恣意的に拘禁され拷問されている。拘禁中に殺されることさえある。最近、チェチェンの大部分で行なわれていた「対テロ作戦」の終了が宣言され、当局はこれを正常化に向けた一歩だと見なしている。しかしアムネスティ・インターナショナルは、同地域で起こった重大な人権侵害に対する十分な説明責任が果たされることなしには正常化はあり得ないと考えている。
集会の権利は、当局によるデモの禁止によってロシア各地でたびたび侵害されている。とりわけ政治的な反対勢力によるデモは禁止されることが多い。そのようなデモに参加した人びとはしばしば拘禁されている。
活動家、弁護士、ジャーナリストや反体制派メンバーに対する脅迫や襲撃は増え続けており、中にはスタニスラフ・マルケロフやジャーナリストのアナスタシア・バブローワのケースのように、人権擁護を唱えるものの殺害にいたることさえある。人権派ジャーナリストのアンナ・ポリトコフスカヤの殺害に関する裁判は、誰が殺害を命じ、実行したのかという肝心の疑問に答えるものではなかった。このような攻撃に対する捜査は成果が上がらないままとなっており、免責の風潮を作り出し、強固な市民社会の発展を阻害している。
非政府組織(NGO)の活動を規制する2006年の法律は、過大な事務負担から司法による嫌がらせに至るまで、困難を引き起こしている。アムネスティは繰り返し、同法の見直しを要求してきた。アムネスティは、2006年のNGOに関する同法を修正するために、政府関係者とNGOで構成される作業部会が設置されたことを歓迎する。アムネスティは、市民団体や活動家たちの活動を奨励するための対策がとられることを保証するよう、メドヴェージェフ大統領に要請する。
ユーコス元社長のミハイル・ボドルコフスキーとプラトン・レべデフの裁判と拘禁中の取り扱いは、刑事司法制度に重大な欠陥があることを明らかにした。このような欠陥により、公正な裁判を受ける権利が損なわれている。
国際舞台においても、ロシア軍は、2008年8月のロシアとグルジアとの武力紛争中、民間人の住宅に対して無差別に攻撃し、事実上ロシアの支配下にある地域に住む民間人を、南オセチア軍と民兵による人権侵害から保護しなかったと報告されている。
大統領就任から1年が経ち、アムネスティはメドヴェージェフ大統領に対し、法の支配を強化する対策を緊急に講じること、及びロシア連邦法と同国が締約している数々の国際人権条約の定めに従い、同国政府が人権を尊重し保護することを保証するよう求める。
大統領はジャーナリストや人権擁護活動家との最近の会談において、人権状況の改善は可能であるという希望を与える発言をしている。
「メドヴェージェフ大統領は、法の支配の尊重と活気ある市民社会は、健全な社会のために必要だと語っている。改革に対して口先だけではなく、自らの発言が体裁をとりつくろうだけのものでないことを証明するために、具体的な行動が求められている」と、アイリーン・カーンは述べた。
アムネスティ発表国際ニュース
2009年5月7日
関連ニュースリリース
- 2024年12月21日 [国際事務局発表ニュース]
ロシア連邦:ロシア語を話せない移民の子どもの入学禁止法の撤回を - 2024年6月10日 [国際事務局発表ニュース]
ロシア連邦:戦争に反対する子どもたちを迫害 - 2024年2月29日 [国際事務局発表ニュース]
ロシア連邦:反テロ法による政権批判への弾圧激化 - 2024年2月19日 [国際事務局発表ニュース]
ロシア連邦:政権批判の急先鋒 アレクセイ・ナワリヌイさんが獄中で死亡 - 2024年2月15日 [国際事務局発表ニュース]
ロシア連邦:抗議する兵士の妻と報道記者への圧力