- 2009年1月13日
- 国・地域:シンガポール
- トピック:死刑廃止
人口460万人の都市国家シンガポールでは、1991年以降、少なくとも420人が処刑されている。国連総会で、圧倒的多数が「死刑の適用の一時停止」を支持した12月18日以降にも、少なくとも3人が死刑判決を受け、少なくとも2人の死刑が執行された。シンガポールは、この国連決議を強く非難している。
メディアの報道によれば、12月19日、シンガポール人のモハメド・アリ・ジョハリが殺人の罪で処刑された。同じくシンガポール国籍の男性タン・チョル・ジンも、1月9日に殺人罪で絞首刑になった。12月30日には、20歳のガーナ人男性チジョケ・スティーブン・オビオハに対し、高等裁判所が大麻密輸の罪で死刑判決を言い渡した。共犯とされるザンビア人女性については最近の報道で触れられていないが、シンガポールでは薬物取引には必ず死刑が適用されるため、この女性も死刑判決を受けるものと危惧されている。
アムネスティは、こうした犯罪の深刻性を認識し、正義を求めるすべての声を支持する。しかしながらアムネスティは、すべての死刑に反対している。その理由は、死刑がもっとも基本的な人権「生きる権利」の侵害だからである。死刑は、残虐、非人道的かつ品位を傷つける究極の刑罰である。また常に誤判の危険があり、無実の人が処刑される可能性がある。
シンガポールでの死刑判決のほとんどは、薬物取引に対して言い渡されている。薬物濫用法では、少なくとも20種類の犯罪に対して絶対的に死刑が規定されている。また、様々な推定事項が規定され、無罪の立証責任が検察側から被告人側に転嫁されている。
超法規的、即決あるいは恣意的処刑に関する国連特別報告者は、薬物関連犯罪による死刑を廃止するよう求め、死刑の絶対的な適用は国際人権基準に違反するものであると述べた。
シンガポールの政策と実務は、確立された長期にわたる世界的な死刑廃止の潮流に逆らうものである。1948年に世界人権宣言が採択されたとき、法律上あるいは事実上死刑を廃止している国は8カ国だった。60年後の今日、その数は138となっている。アジア太平洋地域においては、法律上も事実上も死刑を存置しているのはシンガポールを含めて9カ国である。同地域の27カ国が死刑を廃止、あるいは事実上執行を停止している。
シンガポールでは死刑判決と執行のすべてが公表されてはいないため、この数週間でさらに死刑に関する動きがあった可能性もある。アムネスティはシンガポール政府に対し、死刑の適用に関する包括的な情報を公開するよう求めてきた。同国はまだその要求に応じず、1993年から現在に至るまでの年次統計を公表していない。
アムネスティ発表国際ニュース
AI Index:ASA 36/002/2009
2009年1月13日
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