- 2008年7月25日
- 国・地域:ロシア連邦
- トピック:危機にある個人
報道によると、朝の6時にロシア連邦の法執行官と見られる武装した50人ほどの男が、イングーシ共和国のスンジェンスキー地区にあるトロイツカヤ という村に住むズラブ・ツェチョーエフの家に、3台の軍用車両と3台の小型トラック「ガゼル」で訪れた。家の門を開けたズラブ・ツェチョーエフは、自宅から強制的に連れ出される前に銃を突きつけられて地面にひれ伏すように命令され、その間、法執行官は家宅捜索を行った。捜査は、伝えられるところによると、令状もなく独立した立会人もいないまま行われた。捜査の中で、携帯電話2台とコンピューター1台が押収された。その後、ロシア連邦当局者はズラブ・ツェチョーエフを軍用車両に乗せ、行き先を家族に告げないまま彼を連れ去った。
ズラブ・ツェチョーエフの家族は検察当局と内務省に対して、彼が何者によって拘禁され、どこにいるのかを問い合わせたが、情報はまったく提供されなかった。
数時間後、1人の通行人から、イングーシ共和国の首都マガス近郊、エカジェヴォ村近くの道路脇で、ひどく暴行を受けたズラブ・ツェチョーエフを見つけたという通報があった。押収された携帯電話2台とコンピューター1台も残されていた。ツェチョーエフには多数の傷と打撲傷があり、その後病院に運ばれた。
ズラブ・ツェチョーエフはマガスにあるロシア連邦保安局(FSB)の建物に連れて行かれ、その地下室で拘禁された疑いがある。伝えられるところでは、地下室で彼は、法執行官から殴られ虐待を受けた。その間、法執行官たちは、彼が働いているMASHRというNGOについて質問した。また、イングーシで起きた殺人や誘拐への関与の疑惑がある法執行官の名簿やその他の詳細を反体制派のウェブサイトであるIngushetiya.ruに渡したことにツェチョーエフが関与していると非難した。その名簿は最近になってウェブ上に掲載された。ツェチョーエフは関与を否定した。法執行官たちはコンピューターと携帯電話をチェックしたと考えられている。
ズラブ・ツェチョーエフの拘禁が広く知られるようになると、彼は釈放された。しかし釈放にあたり、もしツェチョーエフが拘禁されたことについて申し立てたり、MASHRの仕事を辞めなかったり、9月までにイングーシから去らなければ、彼とその家族を殺すと脅しをかけたと伝えられている。
アムネスティ・インターナショナルはイングーシ当局に対し、ズラブ・ツェチョーエフに対する恣意的な拘禁、虐待と脅迫に対する疑惑に対して迅速で徹底的かつ公正な調査を保証し、また一連の行為の責任者を法の裁きにかけることを保証するよう要請する。
ロシア連邦当局は、人権擁護活動家に関する国連宣言に従い、人権擁護活動家が妨害・脅迫・嫌がらせを受けずに活動を遂行できるよう、人権擁護活動家の権利を尊重し保護すべきである。
背景:
MASHRは、イングーシ共和国で起きている強制失踪や誘拐事件などの深刻な人権侵害に関する報告書を発表し、キャンペーンを展開している。ズラブ・ツェチョーエフは、同団体のウェブサイトの編集を担当している。
2006年からMASHRは、その活動に関して、税務当局や連邦登録局、共和国検察当局、警察から数多くの査察を受けている。MASHRの代表のマゴメッド・ムツォルゴフは、自らの人権擁護活動を理由に当局から脅迫された。ムツォルゴフは自身と事務所が監視下に置かれていると考えている。
イングーシ共和国においては、他の人権擁護活動家も標的にされている。11月、人権センター「メモリアル」の代表であるオレグ・オルロフと3人のREN TV のジャーナリストが誘拐され、暴行を受け脅迫された後に野原に放り出されたが、これは、同日午後に予定されていた野党デモを報道することを妨害する意図があったと思われる。
ズラブ・ツェチョーエフは、2004年3月11日にマルゴベック地区のヴェルフニエ・アチャルキ村で誘拐され、強制失踪させられた兄のテメルラン・ツェチョーエフについて、欧州人権裁判所に申し立てた。テメルラン・ツェチョーエフは、次席検事のラシード・オズドエフと同じ車で旅していた際に、イングーシのロシア連邦保安局関係者と見られる複数の男にヴェルフニエ・アチャルキ村で拘束された。2人の消息は不明のままである。アムネスティ・インターナショナルはラシード・オズドエフの失踪に関する効果的な捜査が行われるよう、キャンペーンを展開してきた。
アムネスティ発表国際ニュース
2008年7月25日
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