- 2008年2月14日
- 国・地域:日本
- トピック:取調べの可視化
そもそも、志布志事件は、法執行機関が拷問、虐待をおこなった公権力による人権侵害であり、捜査が不適切であったことは、司法当局も認めるところである。鳩山法相の発言は、自分自身がその責任者であるという自覚および認識に欠けたものである。
今回の鳩山法相の発言に対しては、「適正な捜査をすることを強調するべきである」という閣僚内からの批判も出ている。法相は、今回の事件に関して自分自身及び刑事司法当局の責任を曖昧にするような発言をするのではなく、人権侵害に対する責任を明確に認め、再発防止のために国際人権基準に沿った刑事司法制度の抜本的改革をおこなうべきである。
日本の刑事司法に対しては、1998年の自由権規約委員会の最終見解および2007年5月の拷問禁止委員会からの最終見解において、国際人権基準に合致していないことが指摘され、捜査取り調べ段階での録音録画および弁護人の立会いを導入すべきであるなど、数々の勧告が出されている。日本の刑事司法行政の責任者として、鳩山法相は、こうした勧告を誠実かつ速やかに履行する責任を負っている。
自由権規約の最終見解はまた、司法関係者および法執行官に対する人権教育の必要性を強調している。刑事司法当局の最高責任者として、鳩山法相は、法執行官の業務における最優先課題は、人権の擁護および人権侵害の防止であるということを徹底する立場にある。にも関わらず、発言は、検察当局者には人権を守る義務があることに触れていない。むしろ、法相は、今回の事件で萎縮してはならないというメッセージを発している。これでは、人権侵害の再発防止にはつながらない。
今回の事件について、刑事司法当局は、被害者に対する謝罪、賠償はもちろんのこと、捜査取り調べにおける人権侵害の再発防止に適切な措置を速やかに講じなければならない。本年1月に警察庁が事件に関する調査報告書を発表しているが、本調査は内部調査にとどまっており、独立した公的な調査とはなっていない。さらに、この調査報告を受けて発表された取り調べ適正化指針(*)(**)に盛り込まれた措置では、捜査取り調べ段階において拷問や虐待が繰り返される危険性は排除されていない。
アムネスティ・インターナショナル日本は、日本政府が取るべき具体的な刑事司法手続の改善策として、現在の代用監獄の廃止に向けた措置をとること、捜査取り調べ段階での全面的な録画録音の実施、取調べ中の弁護人の立会い、長時間にわたる取り調べの厳格な制限、人権侵害の事案に対する完全に独立した第三者監視機関の設置、捜査取り調べにおいて拷問や虐待にあたると考えられる手法を明確に禁止し犯罪化すること、拷問等に基づいて得られた証拠を排除する適正手続の徹底、などに直ちに取組むことを、鳩山法相および日本政府に対して強く求めるものである。
** アムネスティ・インターナショナルが国連人権理事会にあてて提出した報告書
http://www.amnesty.org/en/library/info/ASA22/001/2008
アムネスティ・インターナショナル日本声明
2008年2月14日
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