- 2007年11月30日
- 国・地域:インド
- トピック:強制立ち退き
報道によると、ディンキア、ヌアガオン、そしてガダクジャンの村を、500人の屈強な武装民兵たちが包囲し、次々と農民に襲撃を始めた先週以降、ジャガティンガプル県では緊迫した状態が続いているとのことである。韓国のポスコ社が進めている総合鉄鋼プラントの建設に伴う立ち退きに抗議するため、農民たちはバリトゥタその他の場所に1年8カ月以上に渡ってバリケードを築いている。つい先日の衝突では、粗製の爆弾を含む国産の武器を利用した民兵による攻撃により、抗議行動の参加者20人以上が負傷した。少なくとも1人が民兵に人質とされた。また、事件当時およそ1000人の警官が動員されたにもかかわらず、地域住民を守るための行動を起こさなかったと伝えている。
アムネスティ・インターナショナルは、2006年カリンガナガール (オリッサ州)と2007年ナンディグラム(西ベンガル州近郊)で起きた2つの悲しむべき暴力のエピソードから教訓を学びとるよう呼びかける。そこでは、産業プロジェクトの建設計画に伴って起こりうる強制立ち退きに対し、地域住民たちが抗議をしていた。2006年1月、カリンガナガールでは、警察による過剰な暴力行為で13人の死傷者がでた。また、ナンディグラムでは、昨年1年間で少なくとも34人が私設民兵によって殺害された。そのほとんどが地元農民であった。
アムネスティ・インターナショナルは、オリッサ州には、その管轄下にある全ての住民の人権を守る責任があることに気づいてほしいと願っている。この義務は、全インド国民の「生存と個人の自由の保障(第21条)」、ならびに「法の下の平等(第14条)」を保障するインド国憲法に基づくものである。
アムネスティ・インターナショナルはまた、オリッサ州政府に「法執行官による武力と銃火器の使用に関する基本原則(第9条)」をもう一度思い起こすことを願っている。この条文の内容は、「法執行官は、自己防衛あるいは差し迫った命の危険や深刻な負傷から他人を守る場合を除いて、生命を脅かす特定の重大な犯罪の実行を防ぐため、そのような危険を及ぼし当局に反抗する者を逮捕するため、また逃亡することを阻止するために、個人に対していかなる銃火器の使用もしてはならず、他の手段では目的を達するために不十分である場合に限り使用が認められる」というものである。警察によるいかなる行動も均衡のとれたものでなくてはならず、また不必要に民間人を傷つけることを避けねばならない。
アムネスティ・インターナショナルは、州政府に対して、立ち退き実施の計画に関係するものも含めその行為が人権に及ぼす影響について、影響を受けるコミュニティーとの十分な協議を実施することを要請する。その際に決定的に重要なことは、開発の中で人権が守られることである。
アムネスティ・インターナショナルは、州政府に、経済・開発政策の中で人権を推進し、守り、尊重する必要性を思い起こさせようとしている。アムネスティは、持続可能な開発が経済指標の観点からのみ計られるべきではないと繰り返し主張している。それはさまざまな要因を含んでいる総括的なプロセスとして見られるべきである。すなわち、市民社会を発展させ法の支配を強化すること、経済的領域だけでなく市民的、政治的、社会的、文化的領域においても個人や集団の人権が実現されることなどである。
このような観点から、アムネスティ・インターナショナルは、オリッサ州政府に以下のことを再度求めるものである。・強制立ち退きを避けること・住民の生活基盤や人権に影響を与えうる施策を導入する前に、地域の住民と優先的かつ継続的な協議をするという方針を明らかにし、実施すべきこと・住民を再定住させるに際して求められるのは、適切かつ文化に細心の注意を払った回復と再定住であり、彼らの家と財産の補償であることを確認すること
背景:
2005年6月以来、ジャガティンガプル県では、オリッサ州政府が韓国の鉄鋼大手ポスコ社と契約を結ぶという決定を受け、予想される強制移住に対し、抗議運動がしばしば見られている。この契約は、ポスコ社が総合鉄鋼プラントを建設できるようにするためのものである。2006年2月以来、抗議者たちはプラントが建設される予定の地域にバリケードをたて、政府関係者が村々に侵入できないようにしている。この地区では2007年2月、4月、9月に暴力行為が目撃されていた。
アムネスティ発表国際ニュース
AI Index: ASA 20/022/2007
2007年11月30日
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