- 2006年9月11日
- 国・地域:米国
- トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
「ブッシュ大統領は、ついに、ずっと報告され続けてきた問題を認めた。すなわち「テロとの戦い」の下で米国が秘密収容と強制失踪を実行しているということを認めたのである。これは、国際法上の犯罪である」と、アイリーン・カーン・アムネスティ事務総長は語った。
CIAの秘密収容所に拘禁されていた14人の男性をグアンタナモに移送すると言ったブッシュ大統領の声明に対して、アムネスティ・インターナショナルは語った。ブッシュ大統領は、14人が裁判にかけられることを示唆した。
ブッシュ大統領は、米国議会に対し圧力をかけ、軍事委員会で「テロ」容疑者とされた人びとを裁判するのを合法化する立法を採択させようとしている。これは、連邦最高裁判所が6月に、ブッシュ大統領が設置した軍事委員会が憲法違反であると判断を下したことを受けての措置である。
「議会は、不公正な訴訟手続き、無期限の収容、人権侵害に対する免責など、国際法や国際基準に相反するようなことは一切許可すべきではない」。「議会は、過去の議決に対して完全な説明責任を、また今後の決議についてはその合法性を確実なものにしなければならない」とアイリーン・カーンは語った。
米国は、2001年9月11日に起こった人道に対する罪を含め、犯罪者を裁く権利と義務を持っている。しかしそれは、人権と法の支配を尊重する方法で実施されなければならない。秘密移送、強制失踪、拷問やその他の非人道的で品位を傷つける取り扱い、起訴もされないままの無期限の収容、そして不公正な裁判は、すべて国際法で禁止されている。
「アムネスティ・インターナショナルは、米国の「テロとの戦い」によるすべての拘禁と尋問方法に関して、国際専門家の意見を取り入れて、完全に独立した調査委員会を設置するよう呼びかけている。米政府が秘密収容を利用していたことを認めたブッシュ大統領の発言は、そのような行為を「合法化する」のではなく、調査こそが緊急に必要だということを示している」。
また、「テロとの戦い」の名の下で犯罪に関与した証拠がある米政府職員について犯罪捜査を実施する特別検察官を任命すべきである。米国は拷問していないという大統領の言葉だけでは不十分だ。
背景情報
アムネスティ・インターナショナルは米政府に対し、「テロとの戦い」の文脈の中で収容されているすべての被収容者に公正な裁判を保障するよう呼びかける。とりわけ、以下の権利が保障されなければならない。
- 有罪と立証されるまでの推定無罪の権利
- 被収容者の選択によって弁護人を立てる権利
- 裁判に出席し検察側の証拠に反論する権利
- 拷問や非人道的で品位を傷つけるような取り扱いや懲罰から引き出したいかなる証拠も排除される権利。
- 控訴する権利
アムネスティ・インターナショナルは、いかなる状況においても死刑に反対することを改めて強調する。
ブッシュ大統領の声明は、6月29日に米国最高裁が出したハムダン対ラムズフェルド事件の判決を受けてのものである。この判決で、ブッシュ政権が提案していた軍事委員会裁判は、米国法に基づいておらず、その手続きが国際法と国内法の双方に違反しているとして、差し止められた。また判決は、武力紛争の状況下での公正な裁判と人道的取り扱いを保障しているジュネーブ諸条約の共通3条が、軍事委員会の裁判にも適用されるとした。
米国の戦争犯罪法は共通3条違反であり、これは米国国内でも訴追可能である。アムネスティは、今回ブッシュ大統領が議会に提出している法案の中に、共通3条違反について米国の国民に対する訴追免除を企図している条項があることを懸念している。ブッシュ大統領はまた、議会に対して軍事委員会裁判を新たな形態で合法化するよう求める提案をおこなったと発表した。
ブッシュ大統領は秘密収容所で被収容者に対しておこなわれているCIAによる「もう一つの」尋問方法については明らかにしなかった。しかし、「水面攻め」(模擬溺)、「冷たい房」(冷たい房の中に被収容者が裸で入れられ、冷水を浴びせられる)などといった手法が使われているという報告が繰り返し寄せられている。
この時期にブッシュ大統領の声明が出されたことで、反テロ戦争の被収容者の拘禁と尋問、裁判の問題は、11月7日の議会選挙の文脈に置かれることになった。アムネスティは、米国の議会関係者に対し、党利党略から離れ、人びとをテロ行為から守るための方策が人権と法の支配を尊重するよう保証するよう、要請する。
AI Index: AMR51/143/2006
2006年9月7日
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