- 2006年5月29日
- 国・地域:イラン
- トピック:死刑廃止
イランは、犯行時18歳未満の子ども犯罪者をいまだに処刑している唯一の国である。
犯行時に18歳になっていなかった者を処刑するのは容認できないという点で、世界は完全に合意しているとアムネスティは述べた。この10年間で、未成年者の死刑はほとんど廃止された。ほんの一握りの国だけが未成年時犯罪者への死刑を存置している。2005年には、子ども犯罪者を多数処刑していた米国がこれを廃止し、執行したのはイランだけとなった。
イランは国連自由権規約および子どもの権利条約の締約国であり、子ども犯罪者を処刑することは、締約国としての義務や国際法に違反する。
アムネスティは、イランで死刑判決を受けているという多数の子ども犯罪者について深い懸念を示し、イラン政府に対し、未成年時犯罪者に対する死刑判決を禁止し、執行を停止するための措置をただちに講じるよう求めた。
2006年5月13日、ロレスタン州の州都ホラマバードで17歳と20歳の少年が絞首刑に処せられた。名前はわかっていない。伝えられるところによれば、2人は12歳の少年をレイプし殺害した罪で、特別審理を受けたという。
これは、未成年時犯罪者に対する死刑執行で判明しているものとしては今年初めてのものである。アムネスティは昨年、イランで8件の子ども犯罪者の死刑があったと記録しているが、そのうち2人は執行の時にもまだ18歳になっていなかった。イランには他にも多くの子ども犯罪者が死刑判決を受けて執行待ちの状態であるという報告があることと照らし合わせると、今回の死刑執行はとくに警戒を要するものである。
18歳のナザニン・マハバード・フィテヒは、2005年3月にカラチにある公園で自分と姪をレイプしようとした3人の男性のうちの1人を刺殺したことを認めたとして、死刑判決を言い渡された。事件当時ナザニンは17歳だった。彼女は法廷で、「自分と姪を守りたかったのです。あの少年を殺したかったわけではありません。誰も助けに来てくれないので、あの状況でどうしていいかわからなかったのです」と述べたと伝えられている。
17歳の少年ネマットは殺人罪で、いつ処刑されるかわからない状況にある。ケンカで姉の夫を殺害したと自白して、イスファハンの刑事法廷で死刑判決を受けた。今年4月、最高裁判所が死刑判決を支持したと伝えられている。
今年1月初め、19歳の女性デララ・ダラビがラシュト市の裁判所で、17歳の時の殺人で死刑判決を受けた。彼女は最初犯行を自白していたが、後に自白をひるがえした。彼女は、一緒に起訴された19歳の男性に頼まれて罪をかぶったのだという。この男性は、犯行時18歳になっていなかたデララ・ダラビは死刑判決を受けるはずがないと誤って信じていた。
今年3月、2年ほど前にテヘラン州でロバト・カリムという男性を殺した罪で、18歳のメハディが死刑判決を言い渡された。犯行当時彼は16歳か17歳だった。兄弟も犯行に関わったとして投獄された。
18歳のムハンマド・ムサヴィ(男性)は、16歳の時に行なったとされる殺人で死刑判決を受けた。最高裁はこの死刑判決を支持し、いつ執行されるかわからない危険な状態にある。
14歳の時に行なったとされる殺人で、ハミド・レザ(男性)が処刑の危機にある。
政府には犯罪の容疑者を裁判にかける権利と責任があることをアムネスティは認識しているが、生きる権利の究極の侵害である死刑には無条件に反対している。
イラン当局は、未成年時犯罪者への死刑適用を禁止する法律の制定を約4年間審議してきたと伝えられている。しかし司法部門の報道官によれば、新しい法律は、未成年者の犯罪の一部について死刑を禁止するに過ぎないという。同報道官は、「キサス」犯罪(殺人など「報復」刑のあるもの)は私的犯罪で、国家は関わらないとした。
2005年1月に提出された、イランの2度目の定期報告書に対する子どもの権利委員会の最終見解には以下のように書かれている。「イランの代表は報告書の公開審査の際に、イランでは18歳未満の未成年時犯罪者の死刑執行を停止していると述べた」。
今こそ、イラン政府はこの約束を果たすときである。今年初めての子ども犯罪者の死刑執行が明らかになったことで、政府が死刑執行を即時停止し、子ども犯罪者の死刑執行を禁止する法律を遅滞無く成立させることが緊急に必要となった。
アムネスティ国際ニュース
(2006年5月19日)
AI Index: MDE 13/053/2006
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