- 2006年4月 3日
- 国・地域:日本
- トピック:取調べの可視化
特に、「日本の人権の汚点」(2005年6月のアイリーン・カーン事務総長来日時の発言)とまで指摘されている現行の代用監獄が廃止されなかった点は、重大な人権侵害につながる問題であり、早急に改善が図られなければならない。
アムネスティは、同法案が、留置場などに対しても刑事施設類似の留置施設訪問委員会を設置し、異議申し立て手続きを設けようとしていることについては一定の評価をするものである。こうした制度においては、人権団体も含めた「広く各界階層から」委員を募るべきであり、合わせて施設や手続きの透明化が十分に図られなければならない。しかし、アムネスティは、刑事施設には設けられた不服申立審査委員会が、留置施設については設けられていない点に懸念を表する。
しかし、何よりも、代用監獄それ自体を解消することが急務である。多くの誤判とされる事件が、代用監獄収容中の自白にもとづいて起訴されている。代用監獄制度の存在は、捜査の正確性にも、また相当性にも疑問を投げかける。諸外国の例を見ても警察留置場に身柄を拘禁することは逮捕後の数時間に限るべきであり、捜査取調べ中は、捜査権限とは明確に分離された拘禁当局が身柄を確保するというのが、国際基準の示すところである。代用監獄がこうした基準を著しく逸脱するものであるということは自由権規約委員会でも都度問題となっており、日本政府が委員会の最終所見に反していっこうに改善策を講じようとしていないことは重大な規約違反である。
また、法案には、弁護人との接見に関しても一般の面会と区別せず、期日等の指定や、「留置施設の規律秩序を害する行為」の場合に接見を禁止できる規定がある。これらは、弁護人の権利を不当に制限するものであり、国際基準にも合致しない。さらに弁護人宛の信書であっても検閲される危険性がある。こうした点はただちに改善しなければならない。
取調べ中のビデオ録画録音や証拠の全面開示など、自由権規約委員会から勧告を受けている他の事項が実現されていない中、代用監獄を法制化し、廃止へと向かうべき流れを無視したことは、日本もその履行義務を負っている国際基準に明確に反する行動である。日本政府は、1998年自由権規約委員会の最終所見に記載された勧告事項を実現するよう、ただちにその方策を示さなければならない。
アムネスティ日本発表
(2006年4月3日)
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