- 2006年1月20日
- 国・地域:タイ
- トピック:死刑廃止
事件を担当した判事は、この犯罪が非人間的であることを理由に、最も厳しい刑罰を言い渡すと述べた。
アムネスティは、この事件を含めてどのような事件にも死刑を適用しないよう求める。この重大かつ非人間的な犯罪に刑罰を与えるのは当然であるが、死刑という非人道的な刑罰は適切ではない。
死刑は生きる権利の侵害であり、残虐、非人道的あるいは品位を傷つける究極の刑罰であることから、アムネスティはすべての死刑適用に反対している。タイ政府に対しても、死刑の廃止を視野に入れた執行停止を導入するよう要請してきた。
アムネスティが知る限りでは、タイでは2003年12月以降、死刑は執行されていない。
当局がこの歓迎すべき事実上の執行停止を維持し、執行を再開しないようアムネスティは要請する。死刑は犯罪の解決にはならず、また特別な抑止効果もない。
たとえば、今回の事件のような女性に対する暴力事件に本当の意味で対応するためには、法律を整備し、被害者の国籍や加害者が誰であるかに関係なくすべての事件を十分かつ公正に捜査するといった実際的な取り組みが必要である。
タイには1000人を超える男女の死刑囚がおり、このうち124人(多くは薬物犯罪)の死刑が確定している。
今回の事件を含め、死刑という最終的かつ取り返しのつかない刑罰が適用される可能性のあるケースでは、すべての裁判が公正な裁判の国際基準に沿うことの重要性が、とくに意味を持つ。
注目を集めた今回の事件では、起訴が早かったことで、被告人が適切な弁護の準備をする時間がなかったおそれがあることが懸念される。ウィチャイ・ソンカオヤイさんとプアロイ・ポシットさんが逮捕されてから、起訴されて有罪判決を受けるまでわずか1週間あまりだった。さらに、裁判に先立って首相が死刑判決を求める声明を出したと報道されているが、このことが裁判の公正さや判決に影響した可能性がある。
被告人の二人は罪を自白したと伝えられている。アムネスティは以前、タイでは死刑事件で自白を証拠として重要視することに懸念を示した。なぜなら、自白を引き出すために拷問が使われるおそれがあるからである。
アムネスティは、今回の死刑判決を自動的に再審理することになる上訴裁判所に対し、以上の点を考慮するよう求めた。また、死刑が廃止されるまでは特に死刑事件に関して、すべての裁判で適正な手続がとられることを保障するようタイ政府に要請する。
背景情報
タイでは、死刑事件で被疑者が有罪を認めた場合、判決が終身刑に減軽されることが多い。有罪判決を受けた人は上級審に上訴する権利および国王の恩赦を申請する権利がある。またタイでは、国際基準に違反して、死刑囚の多くが足かせをつけられたまま拘禁されている。
アムネスティは何年もの間、タイ当局に対してタイ特有の刑事司法制度の脆弱性の問題を提起してきた。その中で、人権侵害と虐待についての捜査が遅いこと、裁判が長引くことについても取り上げてきた。犯罪被疑者から情報や自白を引き出すために拷問や虐待がしばしば使われている。
アムネスティ発表国際ニュース
(2006年1月18日)
AI Index: ASA39/006/2006
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