アムネスティ日本の関西連絡会は、2025年2月8日開催された関西で最大級の国際協力の催しである「ワンワールドフェスティバル」において、パレスチナ・ガザに関するセミナーを開催しました。講師として役重善洋氏(同志社大学人文科学研究所嘱託研究員)をお招きし、パレスチナ・ガザ問題の本質について講演をいただきました。
講演冒頭に役重さんは、ガザはアフリカ・アジア・ヨーロッパをつなぐ結節点であり、私たちはヨーロッパに対してイスラムを前近代的なものとする、そういうフィルターで物事を視がちなのだが、実は「ヨーロッパ対非ヨーロッパ」、「近代対非近代」という二項対立は、ヨーロッパ中心のものの見方だと指摘します。
次に、2000年「第二次インティファーダ」と言われるパレスチナの民衆蜂起が起きた直後に、役重さんは最初のパレスチナ訪問をおこないました。その際の非常に現地情勢が緊迫していていたこと、そのことがパレスチナ問題から離れなくなった重要なポイントの一つだと語りました。インティファーダというのはアラビア語で「一斉蜂起」を意味する言葉だそうですが、役重さんは「一言で言うとパレスチナ社会の老若男女、あらゆる人々が状況を変えるために、パレスチナのために何かしなくてはいけない。そういう衝動にあふれて、活動家ではなく普通の人たちが、老人も子どもも誰もがそのように思っていた。そういう状況だ」と報告します。パレスチナで何十人も人が殺されていることはニュースになるのだが、人の自由が奪われていることはニュースにならない。ガザ地区という非常に狭い地域に何百万人もの人が閉じ込められ、行動の自由が奪われ、人としての振る舞いが制限されている、そのことが何世代にもわたっている、そのことをなによりも見なければならないと力説されます。その多くの例を語られました。
問題の責任は国際社会にあり、役重さんはそのことを歴史に即して語ります。ユダヤ人のパレスチナ移住は入植者型植民地主義の表れであり、パレスチナにいた先住民を正当な理由もなく追い出し、先住民は故郷を追われて難民になっている経緯があります。パレスチナ問題は二段階構造になっており、建国時の難民発生と第三次中東戦争でガザ地区とヨルダン川西岸地区がイスラエルにより占領されさらに入植活動が進行しました。しかもシオニズム運動当初はパレスチナへの入植活動は不活発だったのが、ナチスが政権を獲得しユダヤ人迫害が開始された1933年以降、ナチスの協力のもとパレスチナ移住は急速に進んだそうです。こういう問題提起をされると、私たちは世界各地で起こる人権侵害の現象を、歴史的にとらえる習慣に乏しいところがあることに気づきます。また役重さんは、入植者型植民地主義は日本において、「北海道開拓」や「満州移民」などに典型的に表れていなかったのか、鋭い問題意識を提起されました。私たちはこのセミナーの目的を、「知らなかったことに気づく(知らされていない、隠されている)ことに気づく講演会にしたいと考えました。その意味で役重さんの講演は、わかりやすい資料を駆使した説得力のある講演だったと思います。
パレスチナ状況は依然厳しいものがありますが、ポジティブな進展もあると最後に役重さんは報告します。米国ユダヤ社会において、特に若い世代にイスラエル支持に疑問を持つ者が多くなっていること、パレスチナ解放とフェミニズムが重層しながら取り組まれていることなど、興味深い報告を受けました。私たちはこの問題においても多角的視点から視ていく必要を感じます。
講演会の締めとして、なにわグループの会員よりアムネスティ活動報告として「ジェノサイド調査報告」やオンライン署名の訴えをしました。このセミナーは1時間の枠しかなく厳しいタイム管理でしたが、なんとか無事開催できました。どれほどの方がセミナーに参加いただけるのか心配でしたが、会場づくりをしている最中から、ぞくぞくセミナー参加者が押しかけ、用意していた椅子席を何回も増やしました。それだけこのガザにおけるジェノサイドに、多くの人が関心を寄せていることがわかりました。ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。
開催日 | 2025年2月8日(土)12:30〜13:30 |
場所 | 梅田スカイビル(第32回ワン・ワールド・フェスティバル) |
主催 | 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 関西連絡会 |