袴田巌さんが無罪に!

2024年9月26日、袴田巖さん(88歳)のやり直し裁判で、静岡地方裁判所は袴田さんに無罪判決を言い渡しました。その後、静岡地方検察庁は控訴の権利を放棄し、10月9日、袴田巖さんの無罪が、逮捕から58年、死刑判決が確定してから44年を経て、ついに確定しました。

これは、巖さん、姉のひで子さん、弁護団が闘い抜いて得た勝利であると同時に、長年、袴田さんの人権のために声をあげ支援してきた、市民活動の勝利とも言えるものです。

死刑制度の廃止と刑事司法制度の改革を

袴田巖さんは、1966年、働いていたみそ製造会社の専務一家4人を殺害した「袴田事件」の容疑者として逮捕され、死刑判決を言い渡されました。死刑判決の根拠となった自白は、猛暑の中、1日平均12時間にもおよぶ過酷な取調べで引き出されたものでした。また、犯行時に袴田さんが着ていたとされる血の付いた衣服も有罪の決め手となりましたが、当時からこの証拠の信憑性を疑問視する声が多くありました。9月26日の判決は、これらの自白調書や犯行着衣は捜査機関によるねつ造である、と断罪するものでした。

無罪になったとはいえ、袴田さんが失った膨大な時間を取り戻すことはできません。また、拘置所で長年自由を奪われたことで引き起こされた拘禁症との闘いはこれからも続きます。アムネスティは、半世紀にわたり袴田さんの人権と尊厳を侵害し続けた検察を強く非難し、この苦しみを引き起こした死刑制度の廃止と刑事司法制度の改革を日本政府に早急に求めます。

アムネスティのこれまでの取り組み

■全国スピーキングツアー2012:袴田事件~逮捕から46年「それでも負けてたまるか」~

2012年7月〜12月にかけて、大阪、兵庫、広島、滋賀、静岡、新潟、神奈川、東京の全国8カ所で講演会を行い、袴田巖さんの姉のひで子さんに、袴田事件の司法の問題点や46年間のご家族の支援の日々、そして再審開始への思いなどを語っていただきました。

アムネスティ:全国スピーキングツアー2012/袴田事件~逮捕から46年「それでも負けてたまるか」~

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■袴田巖さんは無実だ!バースデー・リレーアピール

袴田巖さんの77歳の誕生日にあわせ、他団体と共に、事件の早期再審開始と袴田さんの釈放を求める街宣および写真アクションを行いました。袴田さんのえん罪は海外でも大きな関心を呼び、アムネスティの世界中の支部から袴田さんを応援する写真が届きました。

袴田巖さんは無実だ!バースデー・リレーアピール

■2014年1月、4万通の署名を提出

2014年、袴田巖さんが釈放され、再審開始が決定した静岡地方裁判所の判決の前には、日本だけでなく、オーストラリア、英国、オランダ、ドイツ、スペインの各支部から届いた4万通の署名を静岡地検へ提出しました。

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これまでに、袴田巖さんを応援・支援する手紙・はがきは、世界25カ国から実に12,000通以上が集まり、袴田さんが釈放された翌年の2015年に、ご自宅に届けられました。

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届いた手紙を前に、袴田巖さんと姉のひで子さん

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この他にも、早期再審開始を求める署名や、再審開始の判決や無罪判決が出た際には、検察に不服申し立てをしないよう求める緊急署名他団体と一緒に街頭デモ・集会を行うなど、さまざまな方法で、袴田さんの人権と尊厳を守るために声を上げ続けてきました。

アムネスティは1961年に発足して以来、たくさんの人を巻き込んで、手紙・はがき・署名などで、人権侵害に遭っている人たちを応援・支援し、また、人権侵害を行っている政府や当局などに対し改善を求めてきました。こうした皆さんの行動が、約4割のケースで改善をもたらしています。

一人ひとりの声は小さくても、たくさん集まれば、政府や当局を動かす大きな力になります。ぜひ、アムネスティと一緒に人権のために声を上げてください!