キプロスで妻と2人の娘と暮らしていたシリア出身のアフメドさんは、紛争が激化する祖国にいる両親たちを迎えに行った帰り、ハンガリーで逮捕されてしまいました。封鎖されたハンガリーの国境で、衝突する難民と警察に対して冷静になるよう呼びかけただけで、「テロ行為の共犯」の罪で10年の刑を下されてしまったのです。
その後、刑期は5年に短縮され、2019年1月19日には条件付きで釈放されました。しかし、釈放から数カ月が経った今も、妻と2人の娘が待つキプロスへ帰ることができず、ハンガリーの入国管理施設に留め置かれています。キプロス政府がアフメドさんの入国をなかなか許可しないためです。テロ関連で有罪となっていることが理由だと考えられます。
アフメドさんが妻子と離ればなれになってからもう4年が経ちます。娘とスカイプで話したとき、「パパ、いつ帰ってくるの?」と聞かれ、胸が張り裂けそうになったとアフメドさんは話します。
家族が待っているキプロスに、アフメドさんが今すぐに帰り、妻と娘との再会が果たせるよう、キプロス政府に要請してください。
シリア出身のアフメド・Hさんは、2006年からキプロスで生活する定住者です。キプロスで生まれ育った妻と2人の娘はキプロス国籍を持っています。祖国で激化する紛争から年老いた両親、兄弟、おい、めいを助け出すためにシリアに戻ったのは2015年8月でした。両親たちを連れ出し、ヨーロッパの安全な地を目指しましたが、途中のセルビアでは何百人もの難民や移民が足止めされていました。ハンガリーが国境を閉鎖したためです。無理に国境を抜けようとする難民・移民とハンガリー警察が衝突し、何人かが石を投げたことに対して当局は催涙ガスや放水銃で応じました。この衝突では「違法に国境を渡ろうとした」として、アフメドさんと彼の両親を含む11人が有罪となってしまいました。両親は国外退去を命じられ、移動を続けていた他の家族と合流し、今はドイツで暮らしています。しかし、アフメドさんは別途「テロ行為の共犯」で起訴され、10年の実刑を受けてしまったのです。
衝突の際、アフメドさんも石を投げており、またメガホンを使って対話を警察に要求したとみなされました。それが、難民・移民の入国を強要し、憲法秩序を脅かした、とされたのです。ハンガリーの広範な対テロ法では、暴力行為で大衆を危険にさらしたり、政府機関に何かを強要することは、テロ行為と認定されます。しかし、アフメドさんがメガホンを使って行ったのは、警察への要求ではなく、双方に冷静になるよう呼びかけていただけなのです。アフメドさんはハンガリーのあいまいで過度に広範な対テロ法の下で逮捕・起訴され、「テロ行為における共犯」の罪で有罪判決を受けてしまいました。
2018年9月、結審にあたり裁判官は、アフメドさんの呼びかけは衝突する警察と難民・移民の人たちに対して、冷静になるように呼びかけていたという事実を認め、刑期は短縮され、2019年1月にアフメドさんは条件付で釈放されました。
アフメドさんが妻と娘の待つキプロスにやっと戻れると思われた矢先、キプロスがアフメドさんの入国許可をなかなか発行せず、アフメドさんはキプロスの家族とはいまだに再会できずにいます。それどころか、現在アフメドさんはシリアへ強制的に帰国させられるおそれもあります。
期間 | このアクションは終了しました。(2019年7月19日~9月30日) |
要請先 | キプロス内務大臣 コンスタンティノス・ペトリディス |