- 2017年11月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:コンゴ民主共和国
- トピック:企業の社会的責任
コンゴ民主共和国の労働者や子どもたちが劣悪な環境で採掘したコバルトが、鉱業、精錬、部材メーカー、バッテリーメーカーというサプライチェーン(原料の段階から製品やサービスが消費者の手に届くまでの全過程)を経て、電子機器や自動車の大手メーカーの製品に入り込んでいる。
アムネスティは2年前、同国のコバルトをめぐるサプライチェーンを調べ上げ、名が出てきた大手メーカー16社に照会し、いずれの企業もその人権デューディリジェンス(企業活動が人権に及ぼす影響を回避・緩和するために取引先などを精査すること)が不十分であることを指摘した。
今回、アムネスティは、この2年間のコバルトをめぐる対応の進展状況を調査・報告するにあたり、大手のアップルやサムスン、デル、マイクロソフトなどの電子機器メーカー、BMW、ルノー、テスラといった電気自動車メーカーにその後の対応をあらためて照会した。そして、2016年1月以降、コバルトの調達環境をどれだけ改善したかをランク付けして、報告書に盛り込んだ。
この2年で改善があったのはほんの一握りの企業に過ぎず、多くの企業は、同国のサプライチェーンを調べるというような基本的対応さえも手をつけていなかった。
不透明なサプライチェーン
リチウムイオン電池に欠かせないコバルトの世界産出量の50%以上がコンゴ共和国産で、コンゴ産の20%は手掘りだ。狭い坑道の中で採掘する労働者が、致命的な事故に遭ったり、深刻な肺疾患にかかったりするリスクにさらされている。
アムネスティは、同国で採掘されたコバルトが、中国系の加工会社、華友コバルト社に渡るまでを追跡した。採掘されたコバルトは同社を経て、バッテリーに使われ、最終的に電気製品や電気自動車に使用される。
迅速なアップル社、後手のマイクロソフト社
今年はじめ、これらの企業の中でアップル社が最初に、コバルトを調達している企業名を公表した。アムネスティが把握している限り、現時点でアップル社は、コバルトの調達で説明責任を果たす企業として、業界をリードする存在だ。2016年以来、同社は積極的に華友コバルト社と連携して、サプライチェーンを調査し、児童労働に対処してきた。
デル社とHP社も、前向きな姿勢を見せている。両社は、自社のサプライチェーンと華友コバルト社との関わりを調査し始め、またコバルトの採掘現場での人権侵害と過酷な労働を突き止めるために、より厳格な方針を打ち出している。
しかし、他の大手は、驚くほどわずかな対策しか講じていない。
たとえばマイクロソフト社は、取り引きがあるコバルト精製企業名などを公表していない。すなわちマイクロソフト社は、基本的な国際基準すら準拠していない企業ということになる。
レノボ社も同様に対応を怠り、最低限の対応しかしていない。全般的に透明性に欠け、どの企業も自社のサプライチェーン内の人権侵害や仕入先の人権デューディリジェンスのリスクを公表せず、コバルトの調達先の適切な評価を行っていない。
クリーン・テクノロジーの問題点
アムネスティは前回、コンゴの子どもたちが危険な環境で掘り出したコバルトが、電気自動車のバッテリーに使われていることを報告した。
人権にクリーンなバッテリーという意味では、電気自動車メーカーは他の業界に後れを取る。
特にルノーとダイムラーは、情報開示や調達先の評価といった最低限の国際基準をも満たしておらず、両社のサプライチェーンには深刻な欠陥がある。
自動車メーカーの中では、BMWが最も取り組んでおり、コバルトのサプライチェーン方針と取り組みを改善した。しかしいまだに取り引きするコバルト精製企業名を開示せず、その労働者の人権デューディリジェンスの評価を公表する予定もない。
コバルトは、持続可能エネルギーの実現において、重要な役割を果たす。電気自動車のバッテリーには不可欠な部品で、風力発電や太陽光発電といったクリーン・テクノロジーの要ともなるが、コバルトの需要が人権侵害につながる可能性もあるのだ。
電気自動車の需要の増加に伴い、メーカーが自社の取り組みを積極的に開示することは、以前にもまして重要だ。政府もそれに加わって、倫理的なサプライチェーンの構築を、クリーン・エネルギー普及の最優先事項とすべきだ。
2016年のアムネスティの報告書は国際的に注目され、コンゴ共和国政府は鉱山部門に児童労働に対処する委員会を設置し、2025年までに採掘現場での児童の労働を禁止する草案を作った。これらの政府対応の影響を評価するのは時期尚早ではあるが、現時点での取り組みには、明確なタイムラインや、責任の所在、対策を実行するための計画性に欠けている。
政府と大手企業をつなぐ華友コバルト社は、2016年のアムネスティの報告書を受けて、一部の改善に取り組み、以前よりも透明性を増している。しかしまだ十分とは言えず、改善内容の質や効果を正しく評価することは難しい。
企業が取り組むべきこと
企業には、それぞれのコバルト・サプライチェーンにおいて、人権侵害を見つけ、対処し、人権を守る責任がある。
まず人権侵害を特定し、公にすることが不可欠だが、この報告書で取り上げたいずれの企業も実行していない。企業はサプライチェーンにおける人権侵害に気づいたときは、それを認めなければならない。
児童労働や危険な労働環境に企業が関与し、そこから利益を得ているのであれば、企業には救済責任がある。政府や他の企業と協力して、児童労働を撲滅し、学校への復帰や、心身両面でのサポートを提供すべきである。
アムネスティ国際ニュース
2017年11月15日
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