- 2015年10月15日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:
- トピック:難民と移民
世界の首脳が取るに足らぬ論争と逡巡に明け暮れている中、何百万人もの難民が、悲惨な状況の中で放置されてきた。この無情な無作為は、後世の負の遺産となるであろう。アムネスティ・インターナショナルは10月12日、世界が取り組むべきこの難民問題に、8つの施策を提言した。
シリア、イラク、アフガニスタン、またサハラ以南のアフリカなどで起きている紛争などが原因で、世界の難民数はかつてない数に達している。一方、東南アジアでは、ビルマ(ミャンマー)での迫害を逃れるために数千人のロヒンギャの人びとが難民となっているが、海が穏やかになる時期に入り、さらに難民が押し寄せる可能性がある。しかし、彼ら難民は、結局は人身売買など人権侵害の犠牲になってしまう。
各国の難民問題への対応は、恥ずかしいほどにお粗末である。とりわけ先進国は、難民への人道的支援や受け入れの要請を顧みてこなかった。先進国が提供した受け入れ件数は、第三国定住を必要とする115万人のおよそ10%にすぎない。一方、発展途上国は、ほぼ何の支援も受けずに何百万人もの難民を受け入れてきた。
矢面に立つ途上国
主に中東、アフリカ、アジアの発展途上国が、1,950万人に達する世界中の難民の86%を受け入れている。
難民への人道支援は、常に資金不足に直面している。例えば、10月2日現在、国連のシリア難民への人道支援の呼びかけで集まった拠出金は、目標額の46%にとどまり、南スーダン難民支援では、17%でしかなかった。
多くの国は、このかつてない危機に正面から立ち向かうのではなく、難民を国境の外に留め置くことに腐心してきた。これは最悪の道義的破綻である。
8つの提言
本質的には難民問題は、その根本の要因を解決すれば終結する。各国は、紛争と人権侵害の終結に向けた取り組みを模索しなければならない。しかし、この目標達成は容易ではなく、時間を要する。
一方、世界の難民問題が引き起こす計り知れない影響を緩和するため、先進国が今すぐできることはある。アムネスティは、緊急を要する次の8つの点で、各国が協調行動を取るように提言する。
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継続的で予測可能で潤沢な資金調達:
難民問題への人道的対応に対して十分な財政的支援を提供する。また、難民を多数受け入れている国が、難民や受け入れ地域に、相応の経済的支援ができるように協力する。 -
優先的に保護すべき難民全員の受け入れ:
国連高等難民弁務官(UNHCR)によると、特に保護を必要とし、最初に庇護を求めた国から別の国での受け入れが緊要となっている難民の数は115万人にのぼる。アムネスティは、この数が向こう2年間で145万人に達すると予測している。 -
合法的で安全な難民移動ルートの確保:
難民としての権利を得るために危険な移動を強いられてはならない。各国は、難民が家族と共に暮らせるよう支援し、再定住の資格がない難民には人道ビザを導入して受け入れ、就労ビザや学生ビザの発給を一定数難民に割り当てる。 -
人命救助:
各国は、移民政策の実施よりも悲惨な状況にある難民の支援を優先する。各国は、渡航ほかさまざまな状況で生命の危険にある難民の捜索や救援活動に資金を投じ、即時に救いの手を差し伸べる。 -
国境に到着した難民の入国許可:
庇護を求める人びとに、有効な旅券や入国書類の有無にかかわらず、公的な国境検問所からの入国を認める。各国は、迫害や暴力を受けたり、その恐れがある国から逃げてきた人の入国をはばむ、いかなる方策もとるべきではない。ビザなどの書類を持たない者の入国拒否、押し戻し、入国阻止を目的とする国境フェンスの設置など、難民が危険な手段を取らざるを得なくなる状況を作らない。 -
外国人嫌悪と人種差別との闘い:
各国政府は、国自身が外国人嫌悪の対応を取ってはならない。例えば、庇護希望者や移民が、経済的・社会的な元凶だと直接的、間接的に非難することなどだ。また、人種差別などを明示した、あるいは現実に差別を引き起こしかねない法律や政策を改正する。さらに、外国人嫌悪と人種差別に基づく暴力に対処するために効果的な政策をとる。 -
人身売買との闘い:
各国は、人身売買グループを捜査・訴追するうえで、実効的対応をとる。また、人身売買の被害者を保護・支援し、その被害者が難民認定手続きを受けられるよう、あるいは第三国定住の機会が与えられるようにする。人身売買と密入国斡旋を阻止する取り組みはすべて、人命を最優先にする。 -
難民条約の批准と、自国内での難民受け入れ体制の構築:
世界各国は、難民が保護を求め、それを享受する権利を法的に認め、公正な難民認定手続きを実施し、難民に対する基本的な権利、教育や医療などの行政サービスを受ける機会を保障する。
アムネスティ国際ニュース
2015年10月12日