- 2015年10月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
強制された自白に基づく死刑判決を受けてから46年間を拘置所で過ごした奥西勝さん(89才)が10月4日、八王子の医療刑務所で亡くなった。この悲劇は、同じような状況にあるすべての死刑確定者の再審を早急に検討する必要性をあらためて示している。
奥西さんは一貫して無罪を主張し、再審請求をしていた。過去8回の請求は、却下された。2012年に健康状態が悪化し、それまで収監されていた名古屋刑務所から、八王子医療刑務所に移された。
そもそも奥西さんは死刑判決を受けるべきではなかった。日本の司法制度の欠陥である。 度重なる再審請求を否定され、46年以上も過酷な拘置所生活を強いられてきたのは、言語道断である。
再審は、奥西さんにはもはや手遅れだが、強制された自白で死刑が確定した人たちは、他にもいる。当局は早急にこうした事件を再審理し、取り返しがつかなくなる前に正義を果たすべきである。
奥西さんは、女性5人を殺害したとして死刑判決を受けた。外部からの連絡も遮断され、5日間以上も昼夜の取り調べを受けた末、自白を強要された。
一審で自白を撤回し、証拠不十分で無罪となった。しかし、高裁では一転、有罪となり死刑を宣告された。
この46年間、毎日を、いつ死刑を執行されるかわからないという恐怖のなかで過ごしてきた。そのほとんどの時間は、死刑を宣告された多くの者と同様、独房で監禁されていた。日本では、死刑は秘密裏のうちに執行される。死刑確定者が執行を知らされるのは、そのわずか数時間前である。
袴田巌さん
再審を必要とする死刑確定者の1人、袴田巌さん(79才)も、46年間、独房生活を強いられた。昨年4月、静岡高裁が再審決定を下し、即時釈放を命じた。しかし、検察が即時抗告を申し立て、裁判所がその申し立てを現在、審理中である。
検察は、手遅れになる前に、再審を認めるべきである。先延ばしは、袴田さんと家族が長年被ってきた精神的苦痛をさらに長引かせるだけである。
袴田さんは、上司とその家族を殺害したとして、死刑判決を受けた。20日間におよぶ取り調べでの自白の証拠にもとづいたが、裁判では、暴力と脅迫で強要されたとして、自白を撤回した。
殺害時の着衣から採取したDNAと本人のDNAが一致しないことが最新の検査で明らかになった。1966年に有罪判決を出した最高裁判事の1人も、袴田さんは無罪だという考えを公にした。
袴田さんは、長期の独居房生活で精神疾患を患っている。
過酷な取り調べによる自白
日本の裁判は、過酷な取り調べで得られた自白による証拠に大きく依存してきた。取り調べ時間に明確な制限はなく、調書にはすべての供述が反映されず、弁護士の立ち会いも認められていない。
2012年12月に安倍政権誕生後、12人が死刑を執行された。死刑確定者の人数は、過去半世紀で最多の128人(袴田さん除く)にのぼる。アムネスティは、日本政府に対して、死刑廃止と国際基準にのっとった法改正に向けて、まず執行の停止措置を取ることを求めてきた。
アムネスティ・インターナショナルは、犯罪の性質や状況、有罪・無罪、個人の特質、執行手段などにかかわりなく、すべての死刑に例外なく反対する。死刑は、生きる権利の侵害であり、最も残虐で非人道的かつ人間の尊厳を傷つける刑罰である。
アムネスティ国際ニュース
2015年10月4日
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