- 2015年7月30日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
- トピック:地域紛争
アムネスティとフォレンシック・アーキテクチャー(科学捜査構築プロジェクト)は7月29日に発表した共同報告書の中で、イスラエル軍が自軍兵士を捕虜にとられたことに対して行った報復攻撃が戦争犯罪であることを示す、新たな証拠を明らかにした。
新証拠にはマルチメディアから得た膨大な量の資料を詳細に分析した結果などが含まれており、民間人の殺害を目的としてラファを空と陸から攻撃し、少なくとも135名の民間人を殺害したイスラエルの行為が、「人道に対する罪」にも相当しうることを示唆している。
共同報告書は、昨年のイスラエル・ガザ紛争中の2014年8月1日、イスラエルがラファで行った攻撃についての調査結果である。この調査は、ゴールドスミス・カレッジに本拠を置く調査チーム、フォレンシック・アーキテクチャーによって開発された最先端の調査技術と分析力を最大限応用している。
軍事などの専門家が、収集された膨大な証拠の一つひとつを時系列に並べたうえで、8月1日以降に起きた一連の事実を詳細に追った。8月1日は、ハダル・ゴルディン中尉が捕まったことを受けて、イスラエル軍が後に物議をかもした秘密の「ハンニバル指令」と呼ばれる作戦を実行した日だった。「ハンニバル指令」の下では軍は、捕らえられた兵士やその周辺の民間人への危険に配慮せずに集中砲火で攻撃することができる。報告書には、その結果、軍の指令が民間人への違法な攻撃命令となったことが詳述されている。
集中砲火
イスラエル軍のゴルディン中尉が捕まったのは、8月1日だった。後にこの日はラファの「暗黒の金曜日」として知られるようになった。その前には停戦が宣言され、安全だと信じた多くの民間人が帰宅していた。
8月1日に大規模で長時間にわたる砲撃が警告もなく始まった時、通りには大勢の人がおり、多くの人が標的になった。特に車に乗っていた人たちが狙われた。
目撃者の話によると、F-16ジェット戦闘機や無人機、ヘリコプター、大砲からの猛烈な砲火が街に降り注ぎ、歩行者やドライバー、負傷者を収容する救急車などに命中して、人びとは大混乱に陥り、阿鼻叫喚の地獄と化した。
最先端の科学捜査分析
今回の調査では、ラファでの殺りくを目撃した人たちの証言を、多数の場所で撮られた写真やビデオおよびアムネスティが得た最新の高解像度衛星画像などと突き合わした。
分析で明らかになったことは、イスラエル軍のラファ攻撃は、ゴルディン中尉がいる可能性がある複数の場所を目標としており、民間人に対する危険を顧慮せず、彼を殺そうとさえしたということだった。
「フォレンシック・アーキテクチャーは、最新の建築技術とメディア技術を組み合わせて、紛争中の攻撃でできた建物の傷跡情報をもとに、複雑な事件を再現している。ソーシャルメディアにアップロードされた画像やビデオ、証言などさまざまな断片情報を、建築モデルを使って結びつけ、当時の状況を仮想で再現することができる」とフォレンシック・アーキテクチャー事務局長のエヤル・ワイツマンさんはいう。
病院と医療従事者への攻撃
衛星画像や写真を分析すると、ラファでの攻撃で、国際法に違反して繰り返し病院と救急車が攻撃されたことを示す弾痕や損傷を見ることができる。
ある医師は当該地域での攻撃が激しくなってから、パニックになった患者たちがどうやって病院から脱出したのかを説明してくれた。ベッドに乗せられたまま運ばれた患者もいれば、点滴の管を付けたままの患者もたくさんいた。ギブスをしたある若者は地をはって逃げた。
負傷した老人と女性、子どもの3人を乗せた救急車に無人機からのミサイルが命中して燃え上がり、医療従事者を含む同乗者全員が焼き殺された。現場に着いた救急医療士のジャベル・ダラビさんによると、「(黒焦げになった遺体は)ひどく焼けていて手足がなかった」という。さらに痛ましいことに、救急車内の犠牲者の中に、ボランティアで医療補助をしたダラビさんの息子もいた。
不処罰の悪循環を断つ
今回の調査で、紛争中の戦争犯罪など国際人道法に対する重大な違反行為があったことを示す動かぬ証拠を得られた。この結果を受けて、あらためてこの紛争に対する独立した実効性のある調査を要求する。
被害者とその家族には真実を明らかにする権利、補償を受ける権利がある。そして、戦争犯罪を命じた、もしくは実行したと疑われる者たちは、訴追されるべきである。
アムネスティ国際ニュース
2015年7月29日
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