- 2015年6月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
人びとの関心が他に向けられている中で、日本政府は6月25日、今年最初となる死刑の執行を行った
執行されたのは、名古屋拘置所の神田司さん(44才)さんだった。強盗と殺人の罪で死刑判決を受けていた。
人びとやメディアの関心が、日本の軍事的役割の拡大を目指す政府の政策に集まっている中での執行である。
当局はこの時期が執行に好都合だと判断した。このような判断で人命を奪い取るのは、最低の政治である。
政府は開かれた議論を尽すことを避けている。死刑を正当化する論理は、厳しい批判に耐えられないからである。
日本政府は、犯罪に対する一般予防論を死刑制度の存置理由にしているが、一方でこの論理には科学的根拠に乏しいことも認めてきた。
死刑が自由刑よりも犯罪の抑止効果が高いことを示す明確な根拠はない。この事実は、国連や多数の国が行った複数の研究で確認されてきた。
日本政府は、今回の執行で日本の人びとを欺いている。国家による殺人は犯罪対策ではなく、最大の人権侵害である。
死刑執行国の数は、20年前は41カ国だったのが、昨年は日本を含めわずか22カ国である。140カ国が現在、法律上あるいは事実上、死刑を廃止している。G8国の中では、日本と米国のみが死刑を存置しているが、その米国でも、死刑の執行数は減っている。
大多数の国は、この残虐で非人道的、品位をおとしめる究極の刑罰を放棄した。世界の潮流に日本は逆らい、孤立している。
執行を継続して世界の動きと逆向するのか、執行を停止し人権尊重の立場を示すのか、日本はその選択を迫られている。
2012年に発足した現行内閣による執行数は、これで12件となった。昨年は3人が死刑に処され、現在の死刑確定者数は、129人となった。(袴田巖さんを入れて130人)
執行は秘密裏に行われ、死刑確定者は通常、数時間前に執行を告げられるが、まったく告知されないこともある。死刑確定者の家族には、執行の後に知らされることが通例である。
法的な保護措置が不十分であることも、国連の専門家から強く批判されてきた。弁護人による法的助言の機会が制限され、死刑判決に対する義務的な上訴制度を欠くことなどである。精神的、知的障がいを持った死刑確定者が執行されたり、死刑確定者監房に置かれたままの場合もある。
数名の死刑確定者は、長時間にわたる拷問や虐待で罪を認め、「自白」を強要されたと語っている。その「自白」が裁判の証拠として採用され、有罪の根拠となったこともあった。
アムネスティは、犯罪の性質や状況、有罪・無罪、個人の特質、執行手段などにかかわりなく、すべての死刑に例外なく反対する。死刑は、生きる権利の侵害であり、究極的な意味において残虐で非人道的かつ人間の尊厳を傷つける刑罰である。
アムネスティ国際ニュース
2015年6月25日
※死刑執行抗議声明における「敬称」について アムネスティ日本は、現在、ニュースリリースや公式声明などで使用する敬称を、原則として「さん」に統一しています。また、人権擁護団体として、人間はす べて平等であるという原則に基づいて活動しており、死刑確定者とその他の人々を差別しない、差別してはならない、という立場に立っています。そのため、死刑確定者や執行された人の敬称も原則として「さん」を使用しています。
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