- 2014年11月25日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:女性の権利
11月25日の女性に対する暴力撤廃の国際デーにあたり、アムネスティ・インターナショナルは今一度、日本政府に対して日本軍性奴隷制の生存者に対する責任を全面的に認め、無条件に謝罪するよう要請する。
アムネスティはとりわけ、日本政府が言うところの世界に広まる「誤報」を正すことで軍性奴隷制を再評価しようとしていることを憂慮する。
第2次世界大戦前および大戦中に、アジア各地で女性や少女が日本軍により、だまされ、わなにはまり、あるいは強制的に、性奴隷をさせられてきたことは、これまで十分な証言で裏付けられてきた事実である。性奴隷の被害者は、自由を奪われ、数カ月から数年にわたり繰り返し強かんされ、手ひどい扱いを受けた。女性の多くは20歳以下で、わずか12歳の少女たちもいた。
安倍晋三首相は10月3日の予算委員会で、性奴隷制問題に関する答弁の中で「誤報によって日本のイメージは大きく傷ついた」と批判した 。「多くの人びとが傷つき、怒りを覚えた」として、正しい歴史認識を広めていくことを誓った。
さらに、菅官房長官は10月16日、1994年から10年間国連特別報告者をつとめたラディカ・クマラスワミ氏に対し、日本軍性奴隷制問題に関する「クマラスワミ報告」の一部修正を日本政府が求めていることを明らかにした 。
この報告書は、日本軍がどのようにして女性や少女を性奴隷にしたかを説明し、日本政府に対し被害者への補償と謝罪を要求していた。
これらの日本政府の動きは、朝日新聞が元軍人の吉田清治氏の証言に基づいて連載した記事を撤回したことに端を発している。韓国人女性を拉致して慰安所に連行したとするこの証言は、後に誤りであると判断された。
朝日新聞の記事も、クワラスワミ報告もその一部にこの吉田証言を引用していた。しかしながら、吉田証言問題は、日本軍性奴隷制があったという事実および日本に全面的な補償義務があることに何ら疑問を投げかけるものではない。
クワラスワミ氏は9月5日の読売新聞の取材に対し、「報告書は多くの元慰安婦の聞き取り調査に基づき作成した。(朝日新聞が記事を取り消しても)報告書を見直す理由はない。吉田証言は報告書の核心ではない」と答えた。
安倍首相の発言とは裏腹に日本のイメージを損なうのは、性奴隷制に関する「誤報」の報道ではない。「慰安婦」問題に対する十分な責任を果たそうとしないどころか、歴史を書きかえようとする行為こそ、日本のイメージを損なう。
アムネスティは、日本政府に対し以下を要請する。
- 日本軍性奴隷制の生存者に対する責任を全面的に認め、大多数の被害女性が納得できる方法で謝罪し、これらの女性が被ってきた被害を公に認め、生存者の尊厳を回復すること。
- 生存者が被った被害に対して、十分かつ実効的な各種の補償策を講じること。
- 義務教育の教科書に日本軍性奴隷制度についての正しい説明を載せるなどにより、二度と同じ過ちを繰り返さない。
- 政府当局者や公人による軍性奴隷制を否定したり正当化しようとする発言に対して、反論すること。
注
- 安倍晋三首相は3日の衆院予算委員会で、朝日新聞が取り消した慰安婦を巡る吉田清治氏の証言記事について「多くの人々が傷つき悲しみ、苦しみ、怒りを覚え、日本のイメージは大きく傷ついた。『日本が国ぐるみで性奴隷にした』との、いわれなき中傷がいま世界で行われている。誤報によって作り出された」と述べた。(2014年10月3日付け朝日新聞)
- 人権委員会決議(1994/1995)に基づき、ラディカ・クマラスワミ氏がまとめた「女性の暴力とその原因・結果に関する特別報告」。同氏が戦時の軍性奴隷問題に関して朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国、日本の3カ国で調査した。E/CN.4/1996/53/Add.1,4 January 1996.
アムネスティ国際ニュース
2014年11月25日
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