- 2014年6月26日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:死刑廃止
アムネスティ・インターナショナル日本は、本日、大阪拘置所の川崎政則さんに死刑が執行されたことに対して強く抗議する。安倍政権は昨年、4回の死刑執行で8人を処刑し、これまでに9人の命を奪ったことになる。谷垣法相の就任から1年半が経過し、死刑をめぐる情報の公開や全社会的な議論にまったく改善がみられないまま、執行が続けられてきた。現政権のもとで恒常的に行われる死刑執行は、再三にわたり死刑廃止への真摯な努力を求める国際社会の要請に、真っ向から反するものである。
3月27日、静岡地裁は、袴田事件の第2次再審請求ついて、再審開始決定と共に、確定死刑囚であった袴田巌さんの刑の執行停止および身柄の釈放を求める画期的な判断を下した。その中で、地裁は有罪の決定的証拠とされた「5点の衣類」についても、「捜査機関によりねつ造された疑いがある」と結論付けると共に、身柄については「無罪の蓋然性が相当程度あることが明らかになった現在、(中略)拘置を続けることは、耐え難いほど正義に反する」とまで言い切り、死刑制度と刑事司法の根本的な問題点を日本社会に突きつけたと言える。国際的にも悪名高い代用監獄制度の下で長期に勾留して自白を強要する、検察に不利な証拠は開示しないといった諸問題を日本政府は放置し、えん罪の可能性が高い人を46年間も処刑の恐怖にさらしてきた。政府はこの事実を真摯に受けとめ、死刑廃止を含めた刑事司法制度の抜本的見直しを行うことが急務であり、そのために直ちに死刑の執行を停止すべきである。
谷垣法相は、世論の支持を理由に、死刑制度存続の姿勢を示してきた。これに対して2014年2月17日、裁判員経験者20人が、死刑執行を停止し、死刑制度の情報公開を徹底して、国民的議論を促すよう求める要請書を法相に提出した。この要請書には、死刑判決に関わった3人が参加していた。
翌18日、谷垣法相は、元裁判員が要請した執行停止措置について、直ちにその可能性を否定したが、政府には、必要があれば法改正を提案する権限が与えられている。その責務を放棄するかのような態度は許されない。
また、法務省は、死刑に関する情報公開の拡大要請についても、執行を受ける人や関係者、ほかの死刑確定者の心情の安定を理由に、一貫して否定的である。しかし、死刑制度は刑事政策の最重要事項である。裁判員を経験した市民が、その切実な実感に基づいて真摯に情報開示を求め、また国際人権基準に基づくさまざまな勧告でも日本の秘密主義が批判されており、政府は死刑をめぐる情報開示の改善について、真剣に検討し直さなければならない。
アムネスティ日本事務局長の若林秀樹は、「裁判員制度は、司法における情報公開を促した。一方で、裁判に参加した市民は、日本の死刑制度が依然として秘密主義であることに疑問をもっている。こうした市民の声に応えて、政府は今こそ死刑をめぐる情報の公開を進めなくてはならない」と述べた。
アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。死刑は生きる権利の侵害であり、残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑に頼らない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っている。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として公式に死刑の執行停止措置を導入し、死刑に関する情報公開を進め、全社会的な議論を速やかに開始することを要請する。
2014年6月26日
アムネスティ・インターナショナル日本
【背景情報】
2008年、国連の自由権規約委員会は第5回日本政府報告書審査において「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」としており、さらに2013年5月31日、国連の拷問禁止委員会は日本審査の総括所見において、日本政府に「死刑を廃止する可能性を検討すること」を要請した。本年7月に実施される自由権規約委員会の第6回日本政府報告書審査でも、死刑制度は委員の最も大きな関心事項のひとつとなっている。
現在、世界の7割の国が法律上または事実上死刑を廃止している。米国は、G8諸国のなかで日本と並ぶ死刑存置国ではあるが、現在、全50州のうち18州とコロンビア特別区が死刑を廃止している。さらに、2014年2月11日には、ワシントン州知事が、全米で高まる死刑論議に参加するために、任期中の執行停止を表明した。
その際、同州のインスリー知事は、次のように語っている。「かつては死刑を支持していた。しかし、制度維持にかかる膨大な費用、疑わしい殺人抑止力、恣意的で一貫性がない適用と執行など、重大な問題点を認めざるを得なくなった。この欠陥だらけの制度の中では、死刑を公平に適用・執行することはできない。一旦死刑が下されてしまうと、失うものがあまりにも多すぎる」。
注)裁判員裁判制度とは、裁判員として刑事裁判に参加した市民が、有罪・無罪の決定のみならず、量刑の判断も行う制度である。2009年5月21日に始まった。
以上
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