- 2014年5月27日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:地域紛争
3月の政府軍空爆で破壊された建物のがれきを調べる市民(C) AP Photo/Aleppo Media Center AMC
ロシアと中国は5月22日、シリアの深刻な人権侵害の調査を国際刑事裁判所に付託するという国連決議案に、非情にも拒否権を行使した。
決議が採択されていれば、国際刑事裁判所が、紛争のあらゆる当事者による戦争犯罪や人道に対する罪を調査することになり、こうした恐ろしい犯罪の加害者は必ず裁かれるという強いメッッセージを送れたはずだった。
両国の拒否により、国際司法による重要な調査機会が失われた。ロシアと中国は、シリアとの同盟関係を維持するために同国の市民を見捨て、安保理は数百万の人びとへの司法の正義を果すための結束ができなかった。
シリアの危機が始まってから両国が安保理の決議を拒否するのは、これで3度目だ。
今回もまた否決されたことで、安保理の意思決定能力に問題があることが露呈した。そして、安保理に、市民の安全を確保し、紛争の犠牲者が法の正義や真実、補償を手にする道筋がつけられるのか、という疑問も出てきた。
国連がシリア紛争による重大な人道危機に取り組む決議案を作成するまでに、ほぼ3年を要した。人道支援の受け入れと人権侵害の停止を要請する決議案2139が通過したのは、今年の2月だった。2カ月たったが、その決議の条項は堂々と無視されている。
アムネスティ・インターナショナルは、国際法を犯したすべての責任者、決議を実践しないすべての紛争当事者に制裁を加える具体的な措置を取るよう、安保理に要求している。
シリア西部の都市ホムスの一部で包囲が解かれ、人道支援状況にわずかな改善が見られるが、多くの市民は包囲されたままだ。首都ダマスカスの南にある都市ホルムでは、約2万人が包囲下にある。アムネスティの調べでは、昨年7月に行われた包囲網の強化により、飢餓や病気などで260人以上が亡くなり、今年2月22日の国連決議以降では70人以上が犠牲になった。
恣意的拘禁、強制失踪、拘禁中の拷問や死亡なども続いている。決議は、恣意的な拘束や拉致を受けて拘禁されている、良心の囚人などのすべての人びとを解放することを要求しているが、いまだ遵守されていない。
シリア市民の苦悩を軽減する国連の取り組みが何度も功を奏さず、国連の信頼が損なわれ、人権侵害の対応能力が問われている。
シリアでの人権侵害や加害者が罰せられていないことに対して、国連として何らかの意味のある役割を果たすには、安保理の理事国は、政治的駆け引きを排除し、決議を実行し、人権尊重への足並みを揃えることに、本腰を入れて取り組まなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2014年5月22日
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