- 2014年3月13日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ウクライナ
- トピック:地域紛争
クリミア自警団と名乗る男性100人が、約40名の女性が行っていた平和的な抗議活動を無理やりやめさせた。(3月5日、クリミア自治共和国の首都シンフェロポリにて)(C) VOLODYMYR PETROV/AFP/Getty Images
ウクライナ対ロシアの膠着状態がクリミア半島で続き、ウクライナ東部でも、緊張がいっこうに衰えない。全欧安保協力機構(OSCE)が人権に関わる強い役割と権限を持った監視団を緊急に組織し、クリミアをはじめウクライナ全土に派遣することが必要だ。
ここ数日、クリミアでは、人権監視員、第三者視察団、ジャーナリスト、親ウクライナ活動家などへの脅迫や威嚇が激化している。
3月6日、OSCE議長国スイスの特使や少数民族高等弁務官などのOSCE代表が、治安上の懸念からクリミア訪問の中断を余儀なくされた。また3月6日と7日の両日、OSCE査察団が、所属不明の武装要員によりクリミアへの立ち入りを阻止された。
クリミアの多くのジャーナリストや人権活動家の話では、現地取材や人権侵害の報道に対して、武装要員ら攻撃的な集団や軍の兵士の横やりが入ったという。たとえば、3月5日、反旧政権団体の人権監視員の一団が、ナンバープレートも陣営を示す所属表示もない20台ほどの軍用車列の後を追っていた。すると車列の兵士に車を止とめられ、銃を突きつけられて外に出され、「来るな。帰れ」と命じられた。部隊は、所属も、クリミアで何をしているかも、説明を拒んだ。活動家らが、「どこに行こうと自由だ」と命令を拒むと、兵士たちは活動家の車のタイヤをパンクさせて立ち去った。
双方の主張が対立し緊張が増す状況で、国際的な人権監視団と第三者による事実調査が、クリミアのみならず緊張が続く他の地域でも緊急に必要である。OSCE加盟国の多くが派遣を提案しているが、ロシアと、クリミアの事実上の新政権がこれに反対しているという。
クリミアの事実上の政権と当地に駐留するロシア軍には、以下の点を要請する。
- クリミアにおける新政権やロシア軍の駐留に反対する人びとが、意思を平和的に発表できるように、表現・集会の自由の権利を尊重し、保護する
- なんびとも民族的出自や政治的見解のために差別をうけることがないようにする
- ジャーナリスト、人権活動家、国際査察団などが第三者の攻撃から守られ、妨害や威嚇なしにその任務を遂行できるように計らう
- 第三者査察団や国際人権監視員などが、クリミアおよびクリミア内のいかなる自治体や団体にも制限なく自由に出入り・接触ができるように計らい、彼らの安全を保証する
- 実効的管理下にあるすべての武装部隊に対し、「警察官のための国連行動規範」、「警察官の実力行使および火器の使用に関する国連基本原則」に定められた国際基準を遵守し、それによって、生命、自由、個人の安全に関わる権利を尊重し保護するよう指導する
- なんびともクリミア内とその他のウクライナ各地域内およびその両者間を自由に移動する権利を尊重し保護する
ウクライナ当局には、クリミア以外のウクライナ地域における国際的な人権上の責務の遵守とともに、とりわけ以下の点を要請する。
- 表現と集会の自由を保証し、新政権に反対する人びとが平和的にその意見を表明できるように計らう
- なんびとも民族的出自や政治的見解のために差別をうけることがないようにする
- 警察には、「警察官のための国連行動規範」、「警察官の実力行使および火器の使用に関する国連基本原則」に定められた国際基準を遵守し、それによって、生命、自由、個人の安全に関わる権利を尊重し保護するよう指導する
OSCE常設評議会は、人権に関する強い役割と権限を持った監視団を、クリミアほかウクライナ各地に派遣するよう速やかな決定をおこない、すべての当局は、こうした監視団がウクライナ全域に自由に出入りできるよう取り計らうようにすべきである。
アムネスティ・インターナショナル声明
2014年3月7日
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