日本:取調べの全過程録音・録画は、刑事司法改革の必須事項である

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2013年10月15日
[NGO共同声明]
国・地域:日本
トピック:取調べの可視化

法務大臣 谷垣 禎一 様

法制審議会
新時代の刑事司法制度特別部会
委員・幹事 各位

2013年10月8日

取調べの全過程録音・録画は、刑事司法改革の必須事項である
要 請 書

取調べの可視化を求める市民団体連絡会は、取調べの全過程の録音・録画を後退させるいかなる案にも反対し、すべての事件において取調べの録音・録画を基本とした制度設計を進めるよう要請します。

現在、2013年1月に「新時代の刑事司法制度特別部会」がとりまとめた基本構想に基づき、具体的な制度案が検討されています。そこでは、録音・録画の対象範囲を取調官の裁量に委ねたり、録音・録画しない例外を多々設ける案が出されています。しかし、こうした内容では、被疑者が虚偽自白を強要されるに至る不適切な取調べを監視することも、冤罪を防止することもできません。

それゆえ、私たちは以下を求めます。

  1. 録音・録画の対象範囲を取調官の裁量に委ねる「一部録画」では、被疑者が虚偽自白を強要されるに至った過程や、取調官による被疑者への威嚇、脅迫や暴力的な行為、取調官による誘導を監視することができず、冤罪の再発防止に向けた制度改革とは言えません。私たちはこの制度案に強く反対します。
  2. 「一定の例外事由を認めつつ、原則として、被疑者取調べの全過程について録音・録画を義務付ける」案については、例外事由を認める範囲が拡大し、結果として全過程の録音・録画の対象事件が限定的になる危険があります。例外なき全過程の録音・録画を基本とするよう、求めます。
  3. 上記(2)の案について、録音・録画の対象を裁判員制度対象事件に限定することは、現在、検察・警察がおこなっている試行の範囲より狭く、後退と言わざるを得ません。すべての事件の被疑者および参考人の取調べにおける全過程の録音・録画の義務付けを求めます。
  4. 通信傍受の拡大や会話傍受の導入など、プライバシーの権利などを保障する国際人権基準に違反する疑いのある、捜査当局の権限拡大を目指す制度案との抱き合わせを止めるよう求めます。
  5. 全過程の録音・録画導入と合わせ、代用監獄制度の廃止や証拠の全面開示についても改革を検討し、早急に着手するよう求めます。

2013年5月に行われた国連拷問禁止委員会による日本報告書審査では、日本の刑事司法に対する包括的かつ厳しい指摘がされています。取調べについては、自白偏重のあり方が問題とされ、捜査手法の改善、セーフガードとしての全過程の電子的記録(録音・録画)制度の導入、取調べ時間の制限と違反した者への罰則などが勧告されました。

日本は拷問等禁止条約および自由権規約の批准国でありながら、国内の刑事司法を国際人権基準に合致させる義務を怠ってきました。私たちは、日本政府が人権条約諸機関からの勧告を真摯に受け止め、勧告に沿った刑事司法の改革を進めるよう、要請いたします。

取調べの可視化を求める市民団体連絡会

【呼びかけ団体】
アムネスティ・インターナショナル日本
監獄人権センター
日本国民救援会
ヒューマンライツ・ナウ

【構成団体】
冤罪・布川事件の国家賠償請求訴訟を支援する会/国際人権活動日本委員会/志布志の住民の人権を考える会/社団法人自由人権協会/人権と報道・連絡会/菅家さんを支える会・栃木/富山(氷見)冤罪国賠を支える会/なくせ冤罪!市民評議会/名張毒ぶどう酒事件全国ネットワーク/袴 田巖さんの再審を求める会/袴田巌さんを救援する清水・静岡市民の会/フォーラム平和・人権・環境/無実の死刑囚・袴田巌さんを救う会