- 2013年8月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:リビア
- トピック:
ガタフィ政権当時教育大臣を務めたアーマド・イブラヒムさんは他の5人とともに死刑判決を下された (C)Amnesty International
カダフィ政権当時の閣僚が死刑の宣告を受けており、カダフィ元大佐の兵士や支持者ら数百人に死刑が言い渡される恐れが強くなってきた。
元教育大臣のアーマド・イブラヒムさんは7月31日、ミスラタ上告裁判所で他の5人の被告と共に死刑判決を受けた。イブラヒムさんは、武力抗争の間、抗争と内乱を扇動し国家の安全を脅かした罪で起訴されていた。
2011年の内乱に関連して何千人もが拘束されているが、その中にはかつてカダフィ元大佐の治安部隊員や支持者だったと見なされている人びとが含まれている。これから数カ月裁判が進む中で彼らが同様の死刑宣告を受ける危険性がある。
戦争犯罪や人権侵害の犠牲者には加害者が法の裁きを受けるのを見届ける権利があるが、法が復讐の手だてとなってはいけない。カダフィ支持者の裁判でリビアの司法制度が試されることになる。
死刑は人権の究極的否定であり、どんな罪であってもどんな犯罪人に対してであっても正当化できるものではない。今回の死刑判決はリビアにおける人権の後退を意味し、カダフィ政権崩壊後リビア市民社会が成しとげた進展を損なうものである。
イブラヒムさんへの死刑判決は、前政権時代の高官に死刑判決が下される初の例となった。死刑判決は最高裁判所で支持されない限り執行されない。しかし、最高裁が死刑再開を是認することが強く懸念されている。
一方、ミスラタの軍事法廷では6月5日、2011年4月に民間人に向けて無差別に発砲した罪で2人の兵士に死刑が言い渡された。これは昨年11月にベンガジの軍事法廷で5人の兵士に下された死刑判決に続くものである。しかし、軍事法廷は決して死刑を科す権限を持ってはならない。
かつてカダフィ元大佐の側近として名の知られた人びとも裁判を控えており、息子のサイフ・アルイスラム・カダフィさんの裁判は8月末に始まることになっている。国際刑事裁判所は、2011年の内戦の際に人道に対する2つの罪を犯した被疑者として彼の引き渡しを命じたが、リビアはこの命令に不服を申し立てている。
リビアでの治安状況が不安定なことから、容疑者が公正な裁判を受けられるかどうかが深く憂慮される。また、武装民兵による恣意的拘束や強制失踪も続いており、拘禁施設では拷問などの虐待が広く行われているという。
また、裁判所を含めた国家機関も攻撃の対象となっており、弁護士、裁判官、検察官等は常に脅迫を受けている。カダフィ支持の容疑をかけられた人の弁護人が拉致されたり、身体的危害にさらされることもある。
このような状況のもとで、リビアの司法制度が真に独立性と中立性を保てるかは疑わしい。
リビアで裁判に基づいて執行された死刑は、認識されている限り2010年以来のことである。この年、リビアでは18件以上の死刑が執行された。カダフィ前政権のもとでは銃殺隊による死刑執行が定期的に行われていたのだ。同政権時代に死刑が適用される罪の範囲を狭めることを視野にいれた新しい刑法の起草が始められたが、成立には至らなかった。リビアの裁判所は2012年以来、徐々に死刑判決を復活させている。
新しいリビア当局は、カダフィ政権時代より人道的な政策をとらなければいけない。死刑廃止に向けた第一歩としてただちに死刑執行停止の措置をとるべきである。
しかし、内戦後、死刑は表現と結社の自由の権利を平和的に行使する活動も含め、さまざまな犯罪に適用されてきた。
リビアの裁判所は、2011年の内戦とは無関係な罪にも死刑を科し始めた。3月には、昨年5月、トブルクで4人の銀行員を殺した罪で5人の容疑者がベンガジの刑事裁判所で死刑の判決を受けた。
アムネスティ・インターナショナルはいかなる場合でもすべての死刑に例外なく反対する。
アムネスティ国際ニュース
2013年8月2日
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