子ども兵士の徴用を助長する武器貿易

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2013年2月19日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:
トピック:武器貿易条約

コンゴ民主共和国の元子ども兵士(2011年3月) (c)AI
コンゴ民主共和国の元子ども兵士(2011年3月) (c)AI

各国が武器貿易条約(ATT)を採択するにあたり、同条約を厳格化するべき理由は数多くある。その一つが、紛争下での子ども兵士の徴用を阻止することだ。2月12日の国際子ども兵士禁止デーを迎えるにあたり、アムネスティ・インターナショナルはこのように述べた。

マリなど20ヵ国近くの国で、国際的な武器移転の規制が不十分であるために、今も戦闘行為に18歳未満の少年少女を勧誘・徴用する結果となっている。子どもの徴用は、武装グループのみならず、政府軍によっても行われる。

3月に国連で行われるATTの最終会議で、アムネスティ・インターナショナルは、人権を守るために効果的な規則を盛り込んだ厳しい条約を採択するよう、各国に呼びかけている。
アムネスティはマリに関する最新の現地調査で、子ども兵士が直面する恐怖をあらためて明らかにしている。子どもたちは世界中のおびただしい紛争に駆り出され、軍隊や武装グループの後方を支援し、ときには最前線に立たされる。

武器貿易条約は、子どもへの暴力に使われる武器移転を阻止するよう、政府に求めなければならない。さらに、戦争犯罪や深刻な人権侵害を犯した政府軍や、武装グループの手に武器が渡らないようにするための規定を入れる必要がある。しかし、現在の草案は、明らかな効果が見込めるほど厳格ではない。

世界の圧倒的多数の国が、武装勢力や武装グループに18歳未満の者を勧誘・徴用することに反対している。戦闘行為に参加することで幼少期を奪われ、身体的・精神的苦痛や極度の危険にさらされるからである。

子どもたち自身が人権侵害をする犯罪者になるという悲劇に加えて、多くの子ども兵士が殺され、手足を失い、強かんや性的暴力の被害者となる。

子ども兵士徴用の現状

国際NGOの世界子ども兵士禁止連盟(アムネスティは参加メンバー)によると、2011年1月から今までで、少なくとも19ヵ国で子どもが兵士として利用されている。

この19ヵ国にはマリも含まれる。ここ数週間、アムネスティ代表団が目撃者や子どもたちにインタビューしてきた。子どもたちは、現在マリ北部でマリ軍・フランス軍と戦うイスラム武装勢力に徴用されていた。

マリの首都バマコから北東400kmほどにある町ディアバリで、副市長ら数人が、その地域を支配するイスラム武装勢力の中に10歳から17歳の子どもがいたと報告している。

「子どもたちはライフルを携帯していた。1人は小さすぎて、時にライフルをひきずっていた」と、ある目撃者は語った。
セグー州南部では、アムネスティは捕虜になった2人の子ども兵士に会った。その1人には、精神病の兆候が見られた。

もう1人の少年(16歳)によると、少年たちは1月下旬、フランス・マリの両軍によるディアバリ奪還時に拘束されマリ当局に引き渡された。

少年は、イスラム武装勢力に無理やり入れられ訓練を受けた経緯を、アムネスティに語った。

「僕ら24人の生徒は、コーランの先生のもとで勉強していた。2カ月前、先生の孫が僕たちをイスラム教徒に売り渡した。入ったグループには、14人の若い人たちが武器を持っていた。はじめ、僕は調理場で働くように言われた。イスラム教徒が占拠するキリスト教会で料理をしていた。コーランのレッスン中に、僕たちは兵士にゴムベルトでぶたれた。兵士と同じアラビア語の発音をしろと言うんだ。

射撃の訓練では、胸か足を狙えと言われた。戦闘の前は、白い粉を混ぜたご飯と赤い粉を混ぜたソースを食べないといけない。注射もされた。僕は3回も。注射やご飯の後は、自分が自動車になったような気になり、上官のためにはなんでもできた。敵が犬のように思えて、頭にあるのは敵を撃つことだけだった」

少年の話では、イスラム武装勢力からディアバリを奪還しようとする戦闘で、4人の子ども兵士が死んだ。1月20日から21日にかけて、マリ・フランス連合軍がディアバリの町を掌握していた。

アムネスティは、マリ政府が支援する民兵組織も以前は子ども兵士を徴用していたという証拠を得た。しかしこれまでのところ、これらの組織が最前線で子ども兵士を徴用したことは確認できていない。

ここ数年、アムネスティは他の国々でも子ども兵士の徴用あるいはその疑いを確認してきた。中央アフリカ共和国、チャド、コートジボワール、コンゴ民主共和国、スリランカ、ソマリア、イエメンなどである。

条約がどう役立つのか

マリを含む約150ヵ国が、すでに武装紛争での18歳未満の徴用を禁止することに同意し、子どもの権利条約の選択議定書に署名している。現在進行中の戦場で15歳未満の子ども兵士を徴兵・徴用することは戦争犯罪となる。

厳しい規制を盛り込んだATTならば、人権を侵害する政府や武装勢力への武器流出を止め、その結果、子ども兵士の強制勧誘はなくなるだろう。

現在のATT草案の規定は、子ども兵士を使う国家や団体への武器流出を阻止するには弱い。草案の規定は既存の国際人権法や国際人道法を考慮しているが、抜け道が存在する。子どもへの暴力に関する規定を見ると、単に「実現可能な対策を検討する」ことを加盟国に求めているだけである。また武器拡散を防ぐ規制条項も弾薬に触れていないなど、及び腰である。

ATTの規定からこうした抜け道をなくし、徴兵・徴用など子どもへの暴力を助長する武器移転について加盟国を制止するものにするよう、アムネスティは強く求めている。

アムネスティ国際ニュース
2013年2月11日