- 2013年2月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シンガポール
- トピック:
シンガポール当局に起訴された、4人のバス運転手のうちの一人、王獻傑。(C) ROSLAN RAHMAN/AFP/Getty Images
4人の中国人移民バス運転手がストライキをしたとして、シンガポール当局により起訴された。当局が起訴を取り下げない場合、最長1年の懲役と多額の罰金刑を科されてしまう。
バス運転手、何軍令(32才)、高悦強(32才)、劉翔英(33才)、王獻傑(39才)の4人は、犯罪防止(暫定)法第10条(a)項に違反したとして起訴された。有罪になれば禁錮刑だけでなく、それぞれ月給の倍ほどの2000シンガポールドル(およそ15万円)の罰金を科される可能性がある。
中国人移民のバス運転手171人は2012年11月26日、就業を拒否して社の寮にとどまり、「ストライキ行為」を行った。4人も参加していたが、彼らは他の80人とともに翌日までストライキを続けた。
この4人は、寮という私的な場所で平和的なストライキを行い、国際的な人権・労働権法で守られている集会と結社の自由を行使しただけである。にもかかわらず、懲役と多大な罰金を科せられる。
これら基本的、根本的な権利は、移民労働者を含むシンガポールのすべての人びとのために守られるべきだ。
シンガポール当局は4人の運転手に対する起訴をただちに取り下げるべきである。
また、4人のうち2人は、2012年11月に逮捕された際、虐待を受けたと主張している。何軍令は、警官に手錠をはめられ殴られたという。劉翔英は椅子に手錠で縛られた上、警官に殴られ、平手打ちにされた。
シンガポール警察はこの件について内部調査を始めた。しかし、事実を明らかにし、虐待者らを裁くには、独立、透明、中立の調査が必要である。
4人の運転手および支援する人権擁護活動家たちは、過去2ヵ月の間に何度かシンガポールの公安局員に尾行されたと話している。今年1月に警察に被害届を出したが、防止策はまだ何も取られていない。
賃金差別に対する抗議スト
11月の労働ストは、SMRT(シンガポール国営公共輸送機関)に働く運転手の中で、中国人の賃金が他の運転手よりかなり低いことが引き金となった。中国人移民は、同社の2000人の運転手のおよそ4分1を占める。
ストの前月、運転手たちは、50シンガポールドル(約3700円)の賃上げを告げられた。しかし中国籍の運転手は賃上げ対象から外され、初任給はマレーシア人の運転手が1400シンガポールドル(約10万5千円)であるのに対し、中国人は1075シンガポールドル(約8万円)ということになった。シンガポール人の運転手の賃金はさらに高いという。
ストの後、2012年12月にシンガポール当局はストに参加した運転手のうち29人の労働許可証を無効にし、中国に送還した。
シンガポールにおける移民労働者の権利
シンガポールの移民労働者の扱いは、国際的な人権と労働基準に遠く及ばない。
世界人権宣言のもと、人は誰でも平和的な集会に参加し、同一労働には同一賃金を得て、労働組合をつくり、参加する権利がある。
国際労働機関(ILO)によれば、労働者は国籍にかかわらず平和的にストをする「基本的な権利」があり、「生活に欠かせないサービス」部門のストは、サービスの中断で全てまたは一部の人びとの生命、安全、健康のいずれかを脅かす場合、または国の緊急事態にのみ、その権利を制限することができるとしている。
しかし、シンガポールの法律は移民労働者の結社の自由を制限している。労働組合法では、労働省から書面による許可なくしては外国人が組合で役職につけない。
移民労働者は、組合員になる場合シンガポールの組合に参加することを義務付けられている。事実上、自分たちで組合を作ることができない。
当局は職場での移民に対する差別をやめ、雇用および職業の差別に関するILO条約第111号をすみやかに批准すべきである。
アムネスティ国際ニュース
2013年2月7日
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